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ダブルケアは想定されていない(経験者インタビュー)

ダブルケアは想定されていない(経験者インタビュー)

ダブルケアについての情報は少ない

子育てと介護は、それだけでも、とても大変なものです。そんな子育てと介護を同時に行うダブルケアに悩む世帯が増えています。内閣府の調査によれば、未就学児の育児と介護を同時に行なっている人は、全国に25万3千人いると推計されています。

ダブルケアを行なっている人(以下、ダブルケアラー)は、どのように、そうした厳しい状況に立ち向かっているのでしょう。そんなダブルケアラーのノウハウを情報交換できたら、素晴らしいことです。しかし、そうした情報交換の場は、いまのところ、非常に少ない状況です。

そんな状況に鑑み、ダブルケアの当事者であるダブルケアラーにインタビューを行いました。現在、ダブルケアに悩んでいる人はもちろん、介護の専門職にも、ダブルケアの課題について、理解を進めるときの材料の一つとしていただけたら幸いです。

岩手県在住の八幡さんのケース

岩手県奥州市在住の八幡さん(女性)は、夫と6歳の長女と3歳の長男と暮らしています。八幡さんは第一子を出産して間もない頃、近所に住んでいた義母の認知症の症状に気がつきました。認知症の症状に気付いたきっかけは、義母の朝起きられない、ご飯が作れない、一日中寝ていることが増えたと感じたことでした。

当初、鬱症状のような状態でしたが、やがて日付や時間の感覚が分からなくなっていたそうです。そして、同時期に義父の入院が重なったこともあり、当時、要介護1の義母との同居を決め、介護と子育ての両立が始まりました。

その後、八幡さんは第二子を妊娠し出産するにあたり、家族で話し合いを行い、義母の入所施設を探しました。そして、義母は有料老人ホームへの入所を経て、現在はグループホームで生活をされています。

ダブルケアとデイサービス

毎日が、綱渡りでした。義母は、週4日デイサービスに行っていました。そのデイサービスの帰りの時間に合わせて、誰かが自宅にいないといけない状況でした。デイサービスは、非常に助かる介護サービスですが、帰ってくる義母を誰が迎えるのかは、大きな問題でした。

急な仕事が入った時には、子供の世話は実家に頼むしかありませんでした。ですが、子供の事情で、どうしても義母を迎えることができない場合は、とても困りました。子供の保育先の送り迎えもあります。それと、帰宅の時間が重なってしまったときなどは、デイサービスの帰りに間に合わまいこともありました。
 
八幡さん夫妻は、それぞれに仕事の時間を調整しながら、介護と子育てと仕事の両立を行なってきました。義母の通うデイサービスの職員に依頼し、鍵を預けて自宅に入れてもらう対応をとり乗り切った日もありました。

実家の存在がなければ・・・

八幡さんの実家が、自宅から近所であったことは、大きな救いでした。子供の保育園のお迎えや託児に関しては、実家の協力を得ながらダブルケアを乗り切っていたそうです。もし、実家が近くなかったら、ダブルケアの厳しさを乗り越えられたかどうかはわかりません。

八幡さん夫妻は、2人とも自営業であり、勤務時間を調整しやすい環境にあったという点も、大きな救いでした。実家が近く、かつ、勤務時間の調整ができたという部分は、ダブルケアラーとしては、大きな助けになっています。ただ、これらの条件は、万人に付与されているものではありません。
 
八幡さんは、義母の入所施設を探す中で、また子供の保育園の入園などでも、ダブルケアの苦労が、世間に理解されていないと感じたそうです。自分たちでなんとかするしかないという状況は、実家が遠く、勤務時間の調整ができない人にとっては、厳しすぎます。

実際にダブルケアを相談してみると?

介護の入所の申請や保育園の申請で、ダブルケアの話をしてもキョトンをされることが多かったそうです。家の中に介護と子育てが両方存在している感覚がわからないのだなと思うことが何回かありました。

そもそも、各種の申請書には、主たる介護者が出産をするかどうかとか、介護者が子育て中かどうかを問うような項目はありませんでした。いまの日本は、ダブルケアを想定していないということは、こうした申請書からも、痛いほど伝わってきたと言います。

ダブルケアという言葉自体が、まだ社会の中での認知度が低いという状況があります。高齢者施設の入所基準や保育園の入所基準は、各自治体の判断となりますが、ダブルケアの想定をしている自治体は依然として少ないのです。

八幡さんからのメッセージ

30代で子育ての話をする場所はたくさんあっても、介護の話をする場所は少ないです。同世代のダブルケアのお母さん同士で話す場所が欲しいと思い、自分でそんな場所を作りましたが、1人でもし抱え込んでいる人がいたら、自分が大変だっていうことは、きちんと声に出して欲しいと思います。

はじめは、ダブルケアの現状について、周囲にどんなことが大変で困っているのかを説明しましょう。理解してもらうための労力はかかりますが、直接的に助けてもらったり、アドバイスがもらえることも多くあります。ただ、行政窓口は子育て支援と介護支援の窓口が分かれていることが多いのが現状です。

しかし、こうした問題は、当事者たちが諦めずに声をあげ続けることでしか改善しません。ダブルケアは社会的な課題であり、それが広く認識されることを望みます。そして、少しでも早く、実状に即した行政の対応がとられることを願ってやみません。

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