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ダブルケアの情報不足は少しずつ改善する?ダブルケアサポート横浜の取り組み

ダブルケアの情報不足は少しずつ改善する?ダブルケアサポート横浜の取り組み

ダブルケアになる人は介護をする人の約4割?

ダブルケアとは、育児と介護が同時に行われていることを指す言葉です。また、広い意味では、育児と介護に限らず、介護と孫支援、育児と配偶者もしくは自分自身のケアなど、複数のケアを同時に行う必要がある状態を指します。そして、こうした状態にある人のことを特にダブルケアラーと言います。

現在、身体的ケアを主としたダブルケアラーの人口は全国に25万3千人(男性8万5千人、女性16万8千人)います。身体的なケア以外にも、食事の世話や病院の送迎、要介護者の話を聞くといった精神的なケアなどを含めると、実際のダブルケアラーはもっと多いと言われています。

ソニー生命のダブルケアに関する調査(2018年)では、過去や現在にダブルケアを経験している人は全体の29.1%、数年先にダブルケアに直面するという人7.5%を合わせると、ダブルケアを経験する人は36.6%と、介護をする人の約4割にもなるということがわかりました。

ダブルケアは、個人レベルの問題ではなく、もはや社会全体で考えていかないといけない問題であるといえます。なお、ダブルケアが社会全体に与える影響についてはこちらの過去記事(2015年12月23日)をご参照ください

筆者(室津)が体験したこと

筆者は、昨年の11月に両親の介護と未就学児の子どものダブルケアを経験しています。家族はダブルケアに対して協力的でしたが、筆者はフルタイムで仕事をしており、他のダブルケアラーの方はダブルケアと仕事の両立をどのように工夫して乗り切っているのか情報を得たいと考えました。

そこで筆者は、自身が住んでいる行政窓口に問い合わせてみました。そのときは、残念ながら、ダブルケアに関する情報を得ることはできませんでした。また、当時の時点では、筆者の住む地域にはダブルケアラーの集うコミュニティーもなかったため、自分自身でダブルケアの情報を探す必要がありました。

そうして見つけたのが、一般社団法人ダブルケアサポート横浜(以下、ダブルケアサポート横浜)でした。ダブルケアについて限られた情報しかない中、ダブルケアサポート横浜の存在は、本当に助かりました。今回は、ダブルケアサポート横浜の許可を得て、その取り組みについて、簡単に紹介してみたいと思います。

ダブルケアサポート横浜

ダブルケアサポート横浜は、日本では数少ない、ダブルケアラーに向けた情報を発信している団体です。具体的には、ダブルケアサポート横浜では、以下の3つの取り組みをされています。

1つ目は、ダブルケアラーに向けた手引書『ハッピーケアノート』を作成し販売(300円/税別)です。この『ハッピーケアノート』には、実際にダブルケアラーがどのような介護や子育て支援サービスを導入して生活環境を整えたのかという事例が紹介されています。また、各種の相談窓口や介護や子育てに関する支援サービスの紹介、経済的な負担が大きいダブルケアにはどれくらいの費用がかかるのかといった、ライフプランについての情報が書かれています。

2つ目は、ダブルケアラーの体験記をまとめた冊子『今、伝えたい〜それぞれのダブルケア』を作成し販売(300円/税別)です。自分で、自分のために読むだけでも参考になりますが、周囲の人にも読んでもらえると、ダブルケアの実際がどのようなものなのか、理解してもらえる助けになるかもしれません。

そして3つ目は、インターネット上でダブルケアに関する相談や情報交換ができる『ダブルケアtalk!』というコミュニティサイトの運営です。ここでは、多忙なダブルケアラー同士の情報交換ができたり、精神的な負担について語り合ったり出来るピアカウンセリング効果があると考えられます。

現在も、ダブルケアに対する具体的なサポートを行っている自治体はまだ少なく、ダブルケアラーが得られる情報も少ないという状況が続いています。しかし、ダブルケアサポート横浜のような活動も、少しずつではあっても、広がりを見せていることが希望です。

日本全国で、ダブルケアの実態調査やダブルケアラーの対話イベントが広がりを見せています。ダブルケアに対する実態への認識が社会全体に広がり、ダブルケアラー自身がダブルケアを行いながらも仕事ややりたいことを継続できる社会作りが待たれるところです。

※参考文献
・相馬 直子, 山下 順子, 『ダブルケアに関する調査2018』, ソニー生命保険株式会社, 2018年
・ダブルケアサポート横浜, 『ハッピーケアノート』
・NPO法人シャーロックホームズ, 『今、伝えたい〜それぞれのダブルケア』, 2017年1月20日

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