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ダブルケアとは、育児と介護を同時に行っている状態を意味する言葉です。そんなダブルケアを行っている人は、全国に25万3千人(男性8万5千人、女性16万8千人)もいます。このダブルケアという言葉自体、まだ世の中での認知度は低く、ダブルケアを行っている人の生活の大変さについては、理解されにくい現状があります。
今回は、ダブルケアを行っている当事者にインタビューを行い、ダブルケアの日常や課題についての話を伺いました(KAIGO LABへの掲載許可をもらっています)。以下、インタビューの内容になります。あくまでも個別の事例であり、全体を代表していない点には注意が必要ですが、なにかの参考になれば幸いです。
熊本県在住の「くろさき・あさこ」さんは、6歳の長男と3歳の次男を育てながら、要介護1の義理の母親(85歳)を介護しています。同居している義理の母親は、心身に複数の病気を抱えており、いつからか認知症の症状が現れています。
義理の母親に介護が必要な状態で、彼女は長男を妊娠し、出産しました。夫や義理の父親は、介護や子育てには協力的です。しかし夫は日中は仕事で不在であり、義理の父親も体力に限界が来ています。そのため、介護や子育ては、主に彼女が行ってきました。以下、彼女のコメントを織り交ぜながら考えていきます。
昔のお嫁さんは(介護や子育てを)こんなにやっていたからと人から聞くと、自分のやっていることが足りないのではないかと感じ、頑張ってしまいます。それでも本当は、もっと子どもたちに手をかけてあげたいとも思います・・・。
義理の母親が何かで困っていたら、他のことはそっちのけで、義理の母親に関わる場面が多かったそうです。また、義理の母親と子供達が同時に病気にかかった場合は、病状の重い方を優先して対応していたそうです。
子供に申し訳ないと思いながらも、子供達は、いつか成長したら、それも分かってくれるだろうという気持ちがありました。同時に、おばあちゃんや子供達から「これをやってほしい」「あれをやってほしい」と言われ続けると、自分が便利な消耗品のように感じられることもありました。
ある時、彼女は、とある知人から考えを変えるきっかけを得ます。その人は彼女とは全く別の視点を持っていました。そして、義理の母親には、義理の母親なりの自立の仕方があるという考え方になりました。そして、子供達と関わる時間について、きちんと考えることが出来るようになっていきます。
大きな気づきは「ダブルケアが終わる頃には、子供達はもう大きくなって成人しているかもしれない」ということでした。そして、子供達と関われる時間も大切にしたいと強く感じることができたそうです。
意外かもしれませんが、それまで専業主婦だった彼女は、外で働くことを選択しました。便利な消耗品としての自分ではなく、社会と関わりを持ちながら、自分の人生を生きる人間としての自分を、子供達に見てもらいたいと考えたからです。そして今年の6月より、パートでクリニックの受付の仕事を始めました。
介護や子育ては、死ぬまで続けることはできません。子育ては、子供が自立するために、親の関わりを手放していく作業でしょう。介護には、必然と終わる時期が来ます。長い期間、ダブルケアだけをしていて、それが終わったときに、自分にはなにもないということが怖かったのです。
世の中では子育てに関する育児書があふれています。そこでは、色んな子育ての方法を選択することが出来ます。しかしダブルケアの書籍やダブルケアの子育ての方法について書かれた情報は少ないのです。彼女自身、どのようにダブルケアの生活を工夫すれば良いのか分からないと感じたそうです。
そこで彼女は、ダブルケアの体験や気づきを4コマ漫画で表現し、SNSに投稿するようになりました。また、熊本県でダブルケアを行っている人達が語り合い、情報交換をできるような座談会の企画を進めています。この記事のトップにあるのが、そんな彼女の4コマ漫画です。
彼女は、依然としてダブルケアの情報が少ない中で、少しでも多様な情報を世の中に発信していき、ダブルケアを行っている人々の精神的な負担の軽減を目指しています。そしていまも彼女は、ダブルケアの中で後悔しない介護と育児の在り方を模索して続けています。
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