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(株式会社ジェイティービー/プレスリリースより)
昨年末より、JTBグループのJTB九州が、高齢者向けの定額乗り放題タクシーの実証実験を福岡市内にて行っていました。(1)かりつけの病院(2)商店街、スーパーマーケットなどの買い物先(3)自宅、の3箇所を事前に登録し、その間の行き来に利用するタクシー定期券を売るという方法です。
高齢者の自動車事故が増えている背景を受けて、少なからぬ高齢者は運転免許を返納したりしています。しかし、それでも移動手段は必要なわけで、JTBは、そこを狙ってビジネスを開発してきました。その名を「ジェロンタクシー」と言います。
この実証実験では、有料モニター50人(福岡市東区・博多区・中央区在住の70歳以上の高齢者)を募集して行われてきました。定期券の費用は、1カ月間で2万8000~6万8000円とされ、利用者の意見などを集めていたようです。
介護という視点からは、遠距離介護に活用できるサービスになるかと思います。遠く離れて暮らす親の、通院や買い物といった日常生活をサポートしてくれるサービスは、かなり助かるでしょう。
この「ジェロンタクシー」の実証実験は、どうやら好調のようです。1月末に終了した第1期の実証実験に引き続き、現在は、第2期の募集がはじまっています。以下「ジェロンタクシー」のウェブサイトになります。福岡市東区、博多区、中央区にお住いの方は、モニター応募を検討してみてはいかがでしょう。
https://www.jtb.co.jp/region/kyushu/taxi/
ここでの実証実験が成功すれば、将来的には全国展開が見えています。JTBが実証実験で見ているのは、収益性でしょう。既存のタクシー会社と連携しての展開のはずで、JTBはもちろん、既存のタクシー会社にとってもメリットがあるかどうかを細かく観察・協議しているはずです。
課題となるのは、このビジネスの収益は、ガソリン代に大きく左右されるビジネスだということです。そもそも、既存のタクシー会社も、わざわざJTBを間に入れなくても、独自に、似たようなサービス展開をすることが可能です。
JTBが間に入るメリットを明確にしつつ、ガソリン代(および電気代)の許容範囲を算出しているはずです。もしかしたら、JTBが入ることで、ガソリン代のリスクを既存のタクシー会社と折半するようなビジネスのスキームをデザインしているのかもしれません。
JTBによる福岡における「ジェロンタクシー」の実験結果を待つまでもなく、タクシー各社は、似たようなサービスの開発を急いでいるはずです。こうした競争があればこそ、安くて便利なサービスが生まれてくるわけです。
高齢者による自動車事故が減るだけでなく、自家用車を持つよりも経済的に有利という状況が生まれることが大事です。そうなったら、運転を不安に思っている多くの高齢者が、こうしたサービスになだれ込むでしょう。
とはいえ、自動運転の開発状況によっては、わざわざこうしたサービスを使わなくても、自動運転付きの自家用車のほうが有利という可能性も出てきます。JTBはもちろん、タクシー各社にも、自動運転に対する付加価値の開発も求められるでしょう。
楽しみですね!
※参考文献
・日本経済新聞, 『JTB、高齢者用タクシー定期券の実証実験 福岡市で』, 2015年12月22日
・共同通信, 『定額乗り放題タクシー 高齢者向けに社会実験』, 2015年12月22日
・株式会社ジェイティービー, 『高齢者向け「定額乗り放題のタクシー定期券」誕生!全国に先駆け福岡市内で社会実験を実施』, 2015年12月22日
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