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「相手の立場に立つ」ことと「共感」は違います。コミュニケーション力の背景にあるもの。

「相手の立場に立つ」ことと「共感」の違い

「相手の立場に立つ」ことは、目的ではなく手段である

人間社会は、様々に価値観の異なる人で構成されています。そうした中で、お互いの感情について理解を深めることは、平和で豊かな未来を作っていくためにも大事なことでしょう。

よく誤解されますが、感情というのは、理性によって管理されているのではありません。脳科学的には、理性のほうこそ、むしろ感情に支配されているとも言われます。感情がなくなった人間は、理性的になるのではなく、ただ決断が下せない状態になることは、実例からもわかっています。

私たちが、他者の感情を理解しようとするとき、まず第一歩として考えたいのが「相手の立場に立つ」ということです。これによって、その立場にあったら、どのように感じるだろうという想像力を働かせることができるからです。

たとえば、私たちは何かに反対したくなったとき「相手の立場に立つ」ことで、反対したくなるようなことの背景にある感情を理解しようとします。脊髄反射的な反対は、知性とは違うと、子供のころから習ってきているからです。

この世界は、いかに課題が多いように見えても、それぞれの感情にそった判断で作られています。社会を変えていきたいなら、このような、それぞれの背景にある感情をを理解し、そうした感情に訴えかける、より優れた考え方を提案しないとならないでしょう。

ここで、注意したいことがあります。「相手の立場に立つ」ということは、それ自体は目的ではないということです。この考え方の目的は、相手の感情を理解することによって、この社会をより良いものにするための変革のロジックを組み上げることにあります。

難しいのは、仮に同じ立場に立てていたとしても、その環境から得られる感情は、それぞれの価値観によって異なるという事実です。つまり「相手の立場に立つ」ことをしたとしても、そこから想像される相手の感情は、必ずしも当たっていないことも多いのです。

大切なのは「共感」を繰り返すことで想像力を鍛えること

「共感」とは、対象となる相手の喜怒哀楽の感情に寄り添い、そこに理解を示すことです。たとえ価値観が違っても、自分の中に、相手と同じ部分を見つけだし、それを広げていくという内的な活動でもあります。

もちろん、先に示した「相手の立場に立つ」ということが「共感」を助けてくれることもあります。しかし、この「相手の立場に立つ」ということには「相手の生の感情に寄り添う」というプロセスが抜けていることに注目してください。

その点「共感」は、そもそも「相手の生の感情に寄り添う」というところからしか、発生しません。こうした「共感」を多数繰り返す中で、私たちは、自分の中に、たくさんの他者の感情を取り込むことができます。それによって、想像力を鍛えることができるのです。

想像力が十分に鍛えられていれば、時には、直接的に話をしたことがなくても「相手の立場に立つ」だけで、相手の感情を理解することができます。実は、これがコニュミケーション力の基礎になっているということは、ここで強調しておきたいです。

もう一段くだいて言うなら、他者の生の感情に寄り添い「共感」を繰り返すということは、想像力のトレーニングになっています。そうして鍛えられた想像力があればこそ、私たちは、初対面の相手とでも、少ない時間で分かり合えるようになるわけです。

介護の現場における「共感」の欠如は致命的である

介護の現場にも、どこまでも「相手の立場に立つ」ばかりで、介護に苦しむ人への「共感」は示してくれない人が多数います。ひどい場合は「相手の立場に立つ」ことで「私なら、こうする」という意見だけを伝えてくる人もいます。

この背景には「介護は多様であるという事実は忘れられがち」ということがあります。それぞれに異なるのが介護なのに、自分の経験から「相手の立場に立つ」だけで、相手の感情までわかると勘違いしやすいのです。本当に、注意したいことです。

介護者としてであれ、要介護者としてであれ、支援者としてであれ、介護の現場に入るときは、まずはそこにいる人々への「共感」からはじめないと、必ずトラブルになります。

またこれは、介護に限らず、いかなる場においても、新しい人的ネットワークに新たに入り込むときには必要になる態度でもあります。新入社員として、中途社員として、コンサルタントとして、取引先として、どのような立場にあっても、特定の組織に新たに入り込むときには「共感」から入らないと、うまくいかないのです。

人間が失敗するとき、そこには例外なく、他者の感情に対する想像力の欠如があります。自分にとって新しい状況であるにもかかわらず「共感」からではなくて、自らの限られた経験をもとにした「相手の立場に立つ」という行動から入ってしまうと、失敗するのです。

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