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介護疲れが原因での、悲惨な事件が起きてしまうかもしれない・・・。現場で、そんなふうに感じたことのあるケアマネが、なんと過半数に登るという調査結果が発表されました。毎日新聞と介護・ヘルスケア事業会社「インターネットインフィニティー」(東京都)の共同調査によるものです。
早急に求められる対策としてケアマネが挙げたのは(1)夜間や緊急時に対応できるサービスの充実;68%(2)経済的支援;62%(3)介護者支援のための新たな法律の整備;55%、といったことでした。
以下、この調査結果の毎日新聞による報道(2016年2月28日)から、一部引用します(アンケートに回答した730人のケアマネの意見)。
調査の結果、55%が介護家族と接する中で「殺人や心中が起きてもおかしくないと感じたことがある」と答えた。実際に介護殺人が起きたという人もいた。
「介護者が心身ともに疲労困憊(こんぱい)して追い詰められていると感じたことがある」とした人も93%に上った。そう感じた担当家族の割合は「1〜3割」の53%が最高で、「1割未満」(32%)「4〜5割」(11%)と続いた。
追い詰められた介護者の状態(複数回答)は「被介護者への暴力的な言動」(59%)「不眠で悩んでいた」(54%)「気分が落ち込み、笑顔や口数が減った」(51%)の順で多かった。
気になっていることがあります。それは虐待や介護殺人などのニュースがあるたびに、多くの介護のプロが、加害者に対して「共感」を示しているということです。ニュースの論調も、加害者に同情的です。
これは「殺人が起こってしまってもおかしくない」というのが、多くの介護の現場だからでしょう。そのように考えてきましたが、今回の報道にあるように、ケアマネの55%までもが「殺人や心中が起きてもおかしくないと感じたことがある」と回答しているのは、想像以上でした。
注意したいのは、今回発表されたアンケート結果は、虐待ではなくて、殺人に対する危惧が述べられていることです。ケアマネが「殺人に至ってしまうかもしれない」と心配するということは、そのぜんちょうとしての虐待が、かなり広範囲に、日常的に起こっていることを示唆しています。
本当に怖いと思っているのは、こうしたニュースを気にしているのは、いま介護を担っている介護者(家族)と、介護業界の人に限られているということです。ただ介護業界の内側で問題視していても、変化は起こらない可能性もあります。
KAIGO LAB 編集部として、24人の、現在は介護とは無縁の人に「介護業界が抱えている問題はなにか」という質問をしてみました。結果として(1)わからない;40%(2)老老介護;23%(3)介護離職;17%、という結果でした(複数回答)。
一番多かったのが「わからない」であることには、少し驚きました。老老介護や介護離職といったところは、テレビのニュースなどでみているからでしょう。しかし、介護職の待遇改善のようなことを挙げた人はゼロでした。
介護とは無縁の状態にある人に「関心をもってくれ」と言っても、うまくいかないかもしれません。しかし、介護業界の未来とは、こうした人々の未来でもあるわけです。この点について、希望になり得るのは、企業が介護離職防止のために、現在は介護とは無縁の従業員にも研修を行いはじめたことです。
いまの介護業界にとって最大の問題は「普通の善良な人が、虐待や介護殺人に手を染めてしまうような状況に置かれている」ということでしょう。介護をする家族の大きすぎる負担を少しでも軽減する必要があります。そのために介護職の人材確保、人材確保のための待遇改善といったことが急務なのです。
しかし、現在の政府が行っていることは、小さな改善ばかりです。改善も必要ですが、この状況はもはや、改善レベルのことではどうにもなりません。以前より、KAIGO LAB として主張してるような「介護職の公務員化」のような、抜本的な改革が必要です。「介護職の公務員化」は、デンマークではすでに実施されていることで、それほど荒唐無稽な話ではありません。
そもそも、介護保険の精神は、介護の責任を家族から社会に移管するという「介護の社会化」だったはずです。これは、今のところ明らかに失敗しています。求められていない公共工事などに使っているお金はありません。オリンピックも大事ですが、それ以前に解決すべき問題があります。
※参考文献
・毎日新聞, 『ケアマネ調査「在宅介護殺人危惧」55%』, 2016年2月28日
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