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日本における高齢者(65歳以上)の人口は、2015年の時点で3384万人、総人口に占める割合は26.7%になります。日本における高齢者の就業者数は、これも2015年の段階で過去11年連続で増加し続けており、681万人と過去最多を記録しました。また、日本の就業者総数に占める高齢者の割合も2015年で10.7%と過去最高になっています。
良いことなのか、悪いことなのかの考察は後にして、主要な先進国における高齢者の就業率について、以下に示します。一見、良さそうな話なのですが、なかなか一筋縄ではいかない話なのです。
素直に喜べるのは、日本では高齢者にも仕事があるという事実です。なにはともあれ、仕事があって、それをこなすことができるというのは助かります。他の国々では、そもそも失業率が高く、仕事をしたくてもできないというケースも多いのです。
また、働いている高齢者(会社役員をのぞく)のうち、26.9%が正社員です。心身健康であれば、65歳以上でも、正社員として頑張っていけるキャリアパスがあるのは嬉しいです。
他国よりも高齢化が進んでいる日本ですから、高齢者の就業環境については、ある程度整っていると言ってよいでしょう。数が多ければ、高齢者だからといって、就業において差別されるケースも減るはずです。
仕事を通して社会貢献をしつつ、健康に気を配りながら、旅行や友人との交流を楽しむ高齢者が増えているというのは良いことです。
日本における高齢者世帯は、その半数以上が年間200万円以下の年金収入で暮らしていることがわかっています。ですから、この高い就業率の裏側には、年金収入では足りない生活費を補うために働かざるをえない人もいるわけです。
特に、非正規社員として働いている高齢者の20%以上が「家計のため」に仕事をしていることがわかっています。この中には「正社員の仕事がないから」という高齢者も8.8%います。いわゆる「ワーキングプア」も相当数いると思われます。
活発で優雅な老後を過ごしている人も増えているのですが、同時に、先の見えない厳しい老後となっている人も増えていると考えられます。この「二極化」は、もはや人生の晩年にあっては、解消することが難しいものです。
もはや、働かなくても、年金と貯金でどうにか暮らしていける高齢者には、実は、仕事があります。それは、どうにか暮らしていける状況を作れたという過去の実績があるということだからです。「◯◯さん、まだ引退しないでくださいよ」と言われるだけの実力があったからこそ、盤石な老後を築くことができたのです。
逆に、働かないと、とても暮らしていけない高齢者には、よい仕事はないと考えるべきでしょう。そうなると、労働条件をめぐる企業との交渉も、弱気にならざるを得ません。「どんな仕事でもやりますから・・・」と訴えかけないといけない立場になるということは、それだけ、現役時代の実績に問題があったとも考えられるからです。
さらに悪いことに、これからは、ロボットが人間の仕事を奪っていきます。簡単な仕事だけでなく、創造性が必要のない仕事は、ロボットのほうが安価で正確にこなします。日本は、解雇規制が厳しいですから、企業としては、正社員で人を雇うよりは、多少高くても、ロボットに手を出していくはずです。
「二極化」は、人生の晩年になって最大化するというのが、現実の姿です。現役時代にはわずかなものに過ぎなかったかもしれないものが、高齢者になると、恐ろしいまでに大きなものになってしまう可能性が高いのです。
これは、全体のほんの一部の高齢者に当てはまることではなくて、むしろ、大多数の高齢者が直面することになる現実だと思われます。であれば、社会としてセーフティーネットを作らないといけないのです。
そのためには、最終的には、公務員の総人件費抑制(一律に下げるのではなく、能力と実績に応じた厳しい傾斜をするということ)に手をつけなければならないでしょう。そして、この大ナタを振るうべきタイミングは、どんどん近づいてきています。
※参考文献
・総務省, 『統計からみた我が国の高齢者(65 歳以上)』, 平成27年9月20日
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