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つらい経験をした人は、大きな成長ができる?心的外傷後成長(PTG)について。

心的外傷後成長(PTG)

つらい経験を乗り越えると、70%の人が心理的に成長する

人間が、なんらかのつらい経験を通して成長することを、特に「心的外傷後成長(PTG:post-traumatic growth)」といいます。この言葉を生み出したのは、心理学者のリチャード・テデスキとローレンス・カルホーンです。

これまでの研究成果によれば、心に大きなダメージを受けた人が、そのつらい経験を乗り越えた場合、70%の人に、心理的な成長があることがわかっています。

とはいえ、全員がつらい経験を乗り越えられるわけではないし、また、それを乗り越えても30%の人には成長は見られないわけです。できれば、つらい経験などしたくないと考えるのが普通だと思います。

東日本大震災における心的外傷後成長(PTG)の研究

つらい経験など、好んで誰もしたくないと思います。それでも、そうしたことは、誰にでも起こりえます。近年では、やはり東日本大震災が、私たちの同胞にとって、非常に悲惨な事件として記憶されているでしょう。東日本大震災後に見られた心的外傷後成長(PTG)の研究報告(西野, 2012年)を以下に引用します。

人は地域に根を下ろし、他者に支えられ生きていること、自然と共生、防災やエコライフの進め、視野の拡大と精神的な柔軟性の獲得、運命や伝統の受容、愛他精神等、大きな学びと精神的変容が認められた。また、希望を持ち、感謝を忘れず、今を大切に生きることの生活の指針を得ていることが示された。

こうした、つらい経験の後に、大きな成長が得られる可能性があるのは、こうしたつらい経験が、過去の自分が大事にしてきた価値観を砕いてしまうからと考えられています。

人間は、つらい出来事があると、それについて何度も考えます。その過程で、過去の自分が積み上げてきたものが、こうしたつらい経験を理解するのに「役に立たない」という事実と向き合うことになります。

そうして、内なる自分にもっと正直に生きることの大切さが感じられるようです。結果として、こうしたつらい経験に押しつぶされることなく、乗り越えることができた場合は、過去の自分よりももっと力強い自分を創り上げているのです。

私たちは、介護という経験を通して、どう変化するか

私たちも、介護を通して、キャリアの一部をあきらめたり、ただ仕事をこなすマシーンのような人生に疑問をもち、そして生きるとは何かを考えさせられます。大事なのは、ただ、そうした環境に悩むのではなくて、変化するということでしょう。

学習とは、その前後において、行動が変わることです(厳密には、行動の基準となる理論に変更や修正が加わること)。

介護というつらい経験を、そのままにしておくと、押しつぶされてしまいます。自分の価値観の、どこに修正を加えれば、介護もまた自分に与えられた試練であると考えることができるのでしょう。

いうまでもなく、介護のつらさは、ひとそれぞれに違います。ただ、同じようなつらさが与えられたとき、それを乗り越えることができる人と、そうでない人に分かれてしまう背景については、いつか理解したいところです。

苦しみと悩みは、偉大な自覚と深い心情の持ち主にとって、つねに必然的なものである

ドストエフスキー

※参考文献
・The Huffington Post, 『つらく苦しい経験をした人こそ、大きく成長できる理由』, 2016年1月8日
・西野美佐子, 『東日本大震災体験後にみられた認識の変化』, 教心第54回総会(2012年)
 

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