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本当に危機的な状況のとき、NPO(非営利団体)の存在はありがたいです。地域による見守りや、認知症カフェなど、介護に関連する多くのサポートが、非営利で提供されています。
ただ、こうしたNPOは、せっかく便利だったのに、ある日突然、サービスが提供されなくなったりします。その理由は、ほとんど例外なく資金難です。あるNPOは、もう30年近くも活動しているのに、近々、サービスが停止されると聞きました。本当に残念です。
このように、皆から求められているのに、廃業せざるをえないNPOが少なくないという背景には、大きな認識上の問題が隠れています。今回は、その問題について、少しだけ深く考えてみます。
NPOが実施しているのは、価値のあることを、非営利(無償や低価格)で提供するということです。利用者からすれば、本来、これと同等のサービスなどを受ける場合は、もっとお金を支払わないといけないところを、NPOを活用することで、安くすませられるわけです。
これは、とても嬉しいことのように思われます。しかし、本来であればそれなりの金額がするものを、それよりも安く、あるいは無料で手に入れるということには、必ず「ひずみ」ができます。こうした「ひずみ」が徐々に大きくなることで、NPOはサービス停止に追い込まれるのです。
NPOとしては、善意でやっている活動です。ですから、儲からなくていいという発想もわかります。しかし、儲からないということは、活動に関わる人数を(そうそう)増やせないということです。そうなると、善意の活動も、現在のメンバーが(それこそ介護などで)忙しくなったりするだけで、続けることができなくなります。
あまり触れたくないですが、NPO職員の待遇は、結婚や出産をためらうほどです。そうした状況では、後継者の育成なども進みにくいのはもちろん、ちょとしたことで組織が崩壊してしまいます。
つまり、誰かの善意(犠牲)で成り立っていることは、瞬発力はあるのですが、持続性は期待できないのです。これとは対照的に、ビジネスには善意は(それほど)期待できませんが、持続性についてはずっと確かです。
行政からしても、ボランティアでやってもらえることは、ボランティアのほうがよいと考えるでしょう。しかし、そのサービスが本当に必要なものであり、また、一時的なものではなく、継続性を期待するのであれば、そこにはきちんと対価としてのお金が発生しないといけません。
結局、本来は価値のあるものを、無償かそれに近い価格で使うということ自体が、優れた活動を停止させるのです。長期的に考えるならば、支払い能力があるのであれば、そこに「正当な対価」を発生させるべきなのです。
感謝の気持ちは大事ですが、「ありがとう」という言葉は、食べることができないものです。生きていくためには、お金も大事です。NPOの中に、本当に残って欲しい、続いて欲しいものがあるならば、寄付をしたり、自分もそのNPOに参加したりといった「対価の提供」が必要です。
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