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仮設住宅を介護施設に?被災地での取り組み(ニュースを考える)

仮設住宅を介護施設に
(気仙沼市唐桑にある仮設の牡蠣むき小屋/KAIGO LABスタッフ撮影;2015年5月)

仮設住宅という資産

東日本大震災では、多くの人が、家を流されました。こうした人々が一時的に避難する場所として、仮設住宅が作られたのは、ご存知だと思います。ただ、本来は一時的な避難場所であったのですが、被災地はまだ復興の途中であり、新しく家を建てられる場所も限られています。

また、仮に場所があったとしても、新たにローンを組んで家を建てるのは、かなり厳しいことです。建設ラッシュから、建材や人件費が高騰しており、土地があったとしても、家を建てられないでいる人も多数います。

これは、介護施設にとっても同じことです。被災地にあった介護施設は、少なからず、津波によって流されてしまっています。介護事業者としては、当然また、なんとか新たに介護施設を建設したいところですが、いかんせん、建設費用が高騰してしまっており、費用面で厳しい状態になっています。

こうした中、仮設住宅として使われていたプレハブの居住設備が、民間団体に無償で提供されるというニュースが入ってきました。以下、朝日新聞の報道(2016年1月2日)より、一部引用します。

震災から5年が近づき被災者の住まい再建が進む中、宮城県気仙沼市と仙台市で使われなくなったプレハブ仮設住宅を、民間団体が譲り受けることになった。仮設住宅は建設コストが上昇しており、「使い捨て」にせず有効活用したいと、県が譲渡先を探していた。岩手、宮城、福島3県で、無償譲渡が実現する初めての例となる。(中略)

震災後、被災地全体で5万3千戸余りのプレハブ仮設住宅が建てられた。厚生労働省の告示では、1戸あたりの費用は約240万円と定められている。だが実際には、建設資材や人件費の高騰に加え、断熱材などの追加工事があり、宮城県で1戸に約730万円、岩手県では約617万円かかっている。プレハブメーカーがリースし、再利用する1万戸以外は、解体や処分にも国費がかかる。

特に認知症にとっては、環境の変化がよくない

よく知られていることですが、認知症の人にとって、住む場所が変わるといった環境の変化は、よくないことです。環境の変化についていけず、困惑し、認知症の状態が悪化してしまうからです。

ただでさえ、東日本大震災によって住む場所を追われてしまった認知症の人にとって、なんとか落ち着いた場所が仮設住宅だったりするわけです。そこからまた、引っ越すとなると、それはそれで大変なことになります。

そうした状況で、その仮設住宅自体を介護施設としたり、仮設住宅の中にできている仮設のグループホームがそのまま継続できたりすることは、とても嬉しいことです。この流れが、今の被災地で生まれつつあるということは、本当に喜ばしいことだと思います。

東日本大震災の被災地では要介護者が増えているが、介護のプロが足りていない

東日本大震災の被災地では、まず、廃用症候群(生活不活発病)から、要介護となる人が増えているという事実があります。にもかかわらず、介護のプロは増えるどころか、逆に減っているというのが現実です。

もちろん、震災によって亡くなってしまった介護のプロもいます。さらに、先にも述べた建設ラッシュによって、これまで介護業界で働いていた人も、建設の要員として、そちらで働いていたりするのです。

これは、残念ですが、建設の要員として働くほうが、介護のプロとして働くよりも、ずっと待遇がよいからです。現場で聞いた話では、給与ベースで、楽に「倍」くらいは違うそうです。これでは、介護の現場に戻りたいと思っても、なかなか戻れません。

なんとか、仮設住宅の再利用などで介護施設の経営に関わる費用を落とし、介護職員の待遇を改善する方向に向かってほしいです。簡単なことではないと思いますが、補助金なども、建設方面だけではなくて、介護のほうにも向けてもらいたいです。

※参考文献
・朝日新聞, 『仮設住宅、民間団体に無償譲渡 宮城県、介護施設などに』, 2016年1月2日
 

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