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助けて!介護事業者は、危機的な状況に。これからどうなっていくのか

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介護事業者が破綻している現実

日本経済新聞のニュース『介護業者の破綻が最多ペース 上期5割増、人件費など経営圧迫』(2015年8月14日)が、以下のようなことを報告しています。

東京商工リサーチによると、今年1~6月の倒産件数は前年同期比約5割増で、年間では過去最多を更新する勢いだ。高齢化で介護需要は高まっているが、人手不足に伴う人件費上昇と建築費高騰が経営を圧迫している。4月から介護報酬が2.27%引き下げられた影響でさらに増える可能性もある。

もちろん、介護事業者の経営力そのものも問題視されるべきところです。ただ、経営力のせいだけにはできない現実が、統計に現れてきているという話です。その原因は「人手不足」にあるというのですが、どういうことなのでしょう?

なぜ「人手不足」が起こっているのか

公益財団法人の介護労働安定センターによる報告『平成26年度「介護労働実態調査」の結果』(pdf)によれば、介護事業者の実に59.3%までもが人手不足と回答しています。人手が不足している理由は「採用が困難である」が 72.2%と多数です。採用が困難なのは「賃金が低い」が 61.3%と、第1位でした。今の介護報酬では、なかなかやりきれないということです。

しかし同時に、介護業界は、そもそも「仕事のやりがい」という面では、非常に魅力的な業界です。介護業界での仕事を選んでいる人へのアンケート結果としては「働きがいのある仕事だと思ったから」というものが52.6%と、トップでした。

社会的な要請と、仕事のやりがいはあるのに、賃金面で報われないという状況が、介護業界の慢性的な問題なのです。これは、今後の国家予算がますます厳しくなる状況とあわせて考えると、本当に大きな社会問題です。「ロボットが介護をすればいい」という意見もありますが、以前、KAIGO LABでもレポートしたとおり、ロボットが満足に介護の仕事ができるようになるのは、まだずっとずっと先の話です。

それにも関わらず、介護報酬は今年の4月から2.27%引き下げられたのです。他に、引き下げられない無駄遣いは本当にないのでしょうか。

介護業界の賃上げが必要だが、財源は・・・

現実に、介護に直面してみれば誰もがわかることですが、介護のプロの存在は本当に重要です。介護業界に、もっとお金が流れるようにならないと、多くの人が「仕事と介護の両立」という難題に負けてしまいます。それは結果として、日本の労働力を大きく減退させ、日本の国力を恐ろしく低下させることにもなるでしょう。

付加価値の高い仕事をしている人々のところに、きちんとお金が流れるようにすることは、本当に大切なことです。そして、民主主義社会に生きている私たちは、選挙を通して、この課題と向き合うことができます。ぜひとも、介護に関わるプロたちを応援していきたいものです。

しかし、財源はどこにあるのか・・・。いっそ、介護業界の従業員を公務員としてしまうとか、抜本的な変革が求められているのでしょう。そこまでのことをしない場合、結局、痛い思いをするのは、私たち自身なのです。

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