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敵対関係!?「医者とケアマネは仲が悪い」は本当か

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緊張関係が生まれてしまう背景

介護に関わる人々を大きな枠で理解しようとすると「医者・看護士」と「ケアマネ・ヘルパー」という2つの大きなプレイヤーがいることに気がつきます。ここで、この2つのプレイヤーの間には「あるべき緊張関係」(またはお互いへの無関心)が存在していることは、知っておいてよいでしょう。

医療専門家サイド(医者・看護士)は、医学的見地を軸としてアドバイスをする存在です。こちらは、科学的によくわかっていないことを推進することを嫌います。そもそも近年は、医療専門家たちは、常に訴訟リスクにさらされている存在です。訴訟になったとき、判断に科学的な裏付けが欠けていると、大変な責任問題にも発展しかねません。

これに対して介護現場サイド(ケアマネ・ヘルパー)は、被介護者にとって最善の介護を考える存在です。こちらは、科学的に正しいかどうかも大事ですが、被介護者の財布はもちろん、冷蔵庫の中身まで把握したうえで、個人的な時間を犠牲にしてまで「被介護者と介護者の希望」を優先して物事を考えようとする存在です。

医療専門家サイドとしては、医療のプロとして被介護者と関わります。これに対して、介護現場サイドは、介護のプロとして被介護者と関わります。当たり前ですね。ただ、医療と介護の境界線はあいまいで、そこでは両サイドに「意見の不一致」が発生することもあります。

「あるべき緊張関係」であって、それは健全なこと

しかし、2つのプレイヤーが、お互いに異なる側面から被介護者と関わっているのは、重要なことです。なぜなら、こうした「多角的な対応」があってはじめて、介護全体の質が上がっていくからです。

例えば、ある被介護者を延命するには、特殊な手術が必要になるとしましょう。そのとき、医療専門家サイドとしては、介護者・被介護者に、この手術をすすめることは「あたりまえ」です。しかし、その手術がとても高額なものであり、介護者・被介護者には、その支払い能力がなかったら、どうするのでしょう。

介護現場サイドからすれば、医者が言うからというだけで、高額な手術を介護者・被介護者に押し付けることはできません。医療専門家サイドからすれば、手術をすれば助かる命をあきらめることはできません。

ここに生まれるのは「あるべき緊張関係」です。結果として、医療専門家サイドは、その手術を安価にして、できるだけ多くの被介護者に届けられるように、技術革新をめざすことになります。介護現場も、そうした手術に頼らなくてよいような予防施策を勉強したり、セカンド・オピニオンを探すことになります。

そもそも「介護」という言葉は、介護現場サイドの「介助」と医療専門家サイドの「看護」という言葉を組み合わせた造語と言われます。「介護」という言葉の中に、既に、2つの異質なものの統合があるわけです。

検証「医者とケアマネは仲が悪い」は本当か

介護者からすれば、この「あるべき緊張関係」は、タイトルとしたような「敵対関係」に見えてしまうかもしれません。しかしそこには、真剣に被介護者の健康と向き合うプロたちの、誠実な姿があるだけなのです。

というわけで「医師とケアマネの仲が悪い」というのは、正しくありません。現実にそういうことがある場合、それは単に、個人的に人間として仲が悪いというだけの話です。
 

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