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孤独が健康に悪いということは、広く知られている事実です。喫煙や肥満よりも孤独の方が健康に悪いというデータさえ存在します。孤独だと、要介護リスクや死亡リスクも高まります。こうしたことは、社会福祉に関わる人の多くが認識しています。
ただ、多くの人に囲まれていれば、それで幸福ということにはならないところが、とても難しいのです。学校や会社に行っていれば孤独と無縁かというと、そんなことはないでしょう。ひとりでいる孤独よりも、集団の中にいて感じる孤独の方が辛いかもしれないくらいです。
家族と暮らしていれば幸せという訳でもありません。当然ですが、高齢者は孫の相手をしていれば幸せというのも、ステレオタイプな意見です。以下、NEWSポストセブンの記事(2019年10月4日)より、一部引用します。
高齢者にとって、「孫の相手をするのが老後の一番の幸せ」という考えは、幻想かもしれない。『下流老人と幸福老人』などの著書があるカルチャースタディーズ研究所代表で三浦展氏が65歳以上の男女の幸福度について調査したところ、1人暮らし男性は孫がいないほうが幸福度が高かった。(中略)
孫ではなく我が子の存在が負担になることもある。つじかわ耳鼻咽喉科(大阪府門真市)の辻川覚志院長が2012~2014年にかけて、60歳以上の男女約1000人の聞き取り調査をした結果、配偶者や子供など家族と同居をしている人は、独居の人よりも生活の満足度が低かった。(後略)
高齢の男性の場合は、特に、子供や孫との付き合い方がわからないことも多そうです。高度成長期を生きたこの世代の男性は、家庭を犠牲にして、仕事に邁進してきた世代です。親に何かをしてもらったという記憶もない世代でもあります。むしろ、子供でも働かされたような時代でした。
そうした世代の男性は、子供や孫との付き合い方について、ロールモデルとなる人もいない状態であり、よくわからなくても仕方がないことです。放っておいてもらいたいけれど、頼りにされて役に立ちたいといった相反する感情の中で悩んでいるのかもしれません。
とにかく、どういう環境が理想なのかは、人によって異なるというところに、もっと注目が集まるべきなのでしょう。相手の価値観を無視して、勝手な価値観を押し付けることは、社会福祉ではありません。
独居の世帯は、ずっと増加傾向にあります。社会全体で、独居が当たり前のことになりつつある今、高齢者の幸せが、子供や孫と暮らすことばかりではないという認識が求められるのは当然でしょう。そして今回のニュースは、そもそも、子供や孫と暮らすことが幸せというのはステレオタイプかもしれないことが示唆しています。
介護のプロの中には、介護をきっかけとした親との同居に反対する人も多くいます。良かれと思って、親を呼び寄せたりすれば、かえってよくないことにもなりかねないのです。
独居であれ同居であれ、世帯がどういった形であるかと、それぞれの幸福には関係がありません。独居でも幸福な人は多数いるし、同居でも不幸な人も多数いるのです。おかしな先入観は捨てて、それぞれに異なる個人の幸福と向き合っていきたいものです。
※参考文献
・NEWSポストセブン, 『高齢者の幸福度 子や孫と同居すると下がるとの調査結果も』, 2019年10月4日
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