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飲み屋で、会社の同僚との会食を楽しんでいるとき、ふと「理想的な10代」というテーマでの議論が始まりました。それぞれの意見は、それぞれの価値観を反映していてとても面白いし、色々と考えさせられることがたくさんありました。
こうした行動は、組織論の世界では振り返り(reflection)と呼ばれ、人間が成長して行くために必要な行為とされています。「理想的な10代」というテーマの中には、友達と良好な関係を築くこと、もっと深く勉強をすること、課外活動で社会を知ることなど、10代という枠を超えて、今の自分にも役に立つ学びがありました。
この議論の結果には皆が満足しているように思えました。おそらくは、これに近いテーマでの議論は、日本全国で行われていることでしょう。そうした議論が、教育環境の継続的な改善につながっているはずです。
そこで私は、同じような学びがあるかもしれないと思い「理想的な70代」というテーマを投げてみました。この議論が白熱すれば、高齢者が生きていく環境の改善にもつながると思ったからです。しかし、このテーマでは、議論は白熱しませんでした。
考えてみれば「理想的な70代」が議論にならなかった理由は簡単です。それが10代であれば、自分自身もかつて経験したことがあります。その経験から「理想的な10代」であれば、誰もがリアリティーのある話をすることができます。
しかし、その場にいたのは、20〜40代の同僚であり、誰も、自分では70代を経験したことがありませんでした。自分で経験したことがなければ「理想的な70代」についての意見は、全て実体験を伴わないものになります。それはどうしても、空疎なものにならざるを得ません。
「理想的な70代」について語れないとしても、70代に関するデータによってマクロな傾向を理解することはできるでしょう。こうしたマクロ分析は、非常に重要です。しかしマクロは、現実とは大きく乖離していることもあります。個別性を無視することがマクロ分析の常だからです。
例えば、マクロにみれば、日本の失業率は極端に低く、ほぼ、完全雇用状態にあるとされます。しかし現実には、ミッシングワーカーのような存在も100万人以上もいるわけです。そうしたミッシングワーカーが、それぞれ、どのように暮らしているのかがわからないと、対策の打ちようもないでしょう。
経験したことがないことは物語を大事にすると理解しやすくなります。歴史でも、過去の人口統計をみることも大事ですが、歴史小説や映画をみることを通して理解が深まるという側面もあるでしょう。そうした個別の物語を大切にすることが「理想的な70代」に近くための重要なヒントになるはずです。
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