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日本全体が高齢化しているのですから、医師もまた高齢化するのは当たり前のことです。ただ、少し心配なのが、医師の高齢化は身近なクリニック(診療所)でより顕著というところです。まずは以下、Business Journalの記事(2019年10月2日)より、一部引用します。
医療の現場にも高齢化の波が押し寄せている。厚労省の「医師・歯科医・薬剤師調査」によると、医療施設に従事する医師数は30万4759人(2016年)。平均年齢は49.6歳である。身近な診療所の医師数は10万2457人で平均年齢は59.6歳。全体の平均よりも10歳も年長だ。
全国の診療所データを見ると、65歳以上の医師は3万2624人。高齢医師の比率は31.84%となる。驚いたことに80歳以上の医師が7149人(6.98%)もいる。超高齢医師がおじいちゃん、おばあちゃんの患者を診ているシーンが浮かんでくる。(後略)
この記事では、65歳以上の医師の割合が高い県として長崎県(41.29%)、徳島県(39.86%)、岩手県(37.78%)、京都府(37.20%)、富山県(37.07%)を挙げています。東京、神奈川、埼玉といった都市部では、65歳以上の医師の割合は30%を下回っているので、地域差もあるようです。
日本では、総合病院の人気が高く、本来であれば総合病院を必要としないような病気や怪我であっても、総合病院に行く人が多くなっています。そうした状況は、本当に総合病院を必要とする患者の救命の機会を奪うものでもあるので、非常に深刻です。
この状況を回避するため、ヨーロッパでは、制度としてのかかりつけ医を持っています。病気や怪我の時は、まず、かかりつけ医にみてもらい、かかりつけ医の判断で、そこのクリニックで治療するか、それとも総合病院に行くべきかどうかが決められています。
日本でも、こうしたかかりつけ医の制度が普及するように、総合病院とクリニックの関係性が見直されてきました。総合病院は、紹介状なしで利用すると、5,000円以上の追加料金がかかるようにもなりました。また、こうして追加料金がかかる総合病院は、もともとの500床以上という条件が、現在では400床以上となっています。今後はさらに200~300床になる予定です。
ここで、日本におけるかかりつけ医として期待されているのは、小規模なクリニック(診療所)です。今回のニュースでは、そうしたクリニックの医師が高齢化してきているということでした。今後はさらに、クリニックの高齢化が進んでいきます。そしてどこかの段階で、医師とはいえ、要介護者になる人も出てくるでしょう。
これからの日本では、医療も介護も、在宅でのケアが増えていきます。それを支えているのは、クリニックとヘルパーです。しかし、クリニックもヘルパーも、どちらもその中心的な役割をこなす人々が高齢化してきています。ここで恐ろしいのが、これまで支援してきた人が、支援を必要とする人に回るということです。
例えば、1人のヘルパーが、3人の要介護者を支援していたとします。しかしそのヘルパーが高齢化し、今度は、自分自身が介護を必要とする人になったとしましょう。すると、そこにいるのは、介護されるのを待っている4人の要介護者であり、ヘルパーがいないと、いきなり大変なことになります。
これと同じように、クリニックの医師が、介護を必要とする状態になった場合、どうなるのでしょう。地域医療が、大きなダメージを受けることは間違いありません。これからの日本では、このように、支援してきた人が、支援を必要とする人に回るという負のインパクトが、全国で問題になって行くはずです。
※参考文献
・Business Journal, 『医師の4割超が65歳以上の県も、診療所で…医師の“超高齢化”で起こる深刻な事態』, 2019年10月2日
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