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介護大手は待遇改善に動き出している

介護大手は待遇改善に動き出している

介護業界における最大の課題は待遇の改善である

KAIGO LABの始まりからずっと主張しているのは、介護業界における最大の課題は待遇の改善であるということです。仕事のストレスが問題とされることもありますが、それはむしろ、低い待遇の結果としての側面があります

そもそも介護業界における人手不足は、他の業界と比較しても、突出してひどい状態になっています。東京都では、介護人材の有効求人倍率が7.46倍にもなっています。このままだと、介護が必要なのに、介護が受けられない高齢者が出てきてしまうような状況です。

介護業界は成長産業であり、今後も増え続ける要介護者に対応するためには、他の業界から人材を引っ張ってこないとなりません。しかし、そもそも介護業界は、日本の全63業界の中でも最悪か、それに近い待遇になっているのです。それで本当に、他の業界から、人材を引っ張ってこれるのでしょうか。

30万人以上が入居待ちの特養、実は部屋はあいている?

公的な老人ホームである特別養護老人ホーム(特養)は、民間の老人ホームよりも安いのに、民間と遜色ない介護サービスが提供されるという、夢のような介護施設です。だからこそ当然、入居待ちとなります。現在は、日本全国で30万人以上が入居待ちをしていると考えられます。

しかし、そうして入居待ちをしている多数の人がいるにも関わらず、実は、特養のベッドは空いているのです。ベッドはあるのですが、介護人材が足りないため、そこに入居者を迎え入れることができないのです。こうした状況は、今後、特養に限らず、増えていくと考えられます。

介護が必要になったとしても、それをサービスとして提供してくれる介護人材がいないという未来がやってきます。そして、介護が受けられないと生きられない高齢者たちは、介護の受けられる都市部に引っ越していくしかなくなり、過疎化ではなく、誰もそこに暮らさなくなる無居住地化も進むでしょう。

この課題に正面から取り組む企業が出てきた

こうした、介護人材の不足という問題に対して、待遇の改善という根本的な解決策を打ち出す企業が出てきました。介護サービス大手8社の事例として報道されています。以下、日本経済新聞の記事(2019年10月1日)より、一部引用します。

介護サービス大手8社が10月以降、ベテランの介護福祉士らを中心とした職員の賃上げに動くことが分かった。対象者は約5万4千人に上る見通し。深刻な人手不足で空きがあっても受け入れできない施設も出てきており、各社は経験を積んだ職員の賃上げで介護職の処遇改善をアピールして人材の確保を狙う。(中略)

SOMPOホールディングスは人材確保が難しい地域などを対象にリーダー職の年収を最大で約80万円、それ以外の職員は最大で約65万円引き上げる。(中略)ベネッセホールディングスも10月から従業員の処遇改善に動く。勤続10年以上のリーダー職のうち年収が500万円以上の人の割合は現在70%だが84%まで引き上げる。リーダー職ではない職員の70%も年収440万円以上に引き上げる。(後略)

こうして介護業界の待遇改善が進んでいくことは素晴らしいことです。ここで終わらずに、さらに待遇がよくなっていくことが望ましいことです。そのための財源は税金なので、そうした未来を実現するには、日本全体の景気がよくなり、税収が上がっていくことが求められます。

※参考文献
・日本経済新聞, 『介護8社、ベテラン職員賃上げ SOMPO最大23%』, 2019年10月1日

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