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排泄とは、体内で不要となった老廃物を体外に出すことです。生きて行くために不可欠の行為ですが、人間社会では、それを誰かに見られるということは、たいへんな苦痛となるものでもあります。
ですから排泄は、たとえ自分の身体が不自由となったとしても、最後まで他人任せにしたくない、自分でなんとかしたいものです。この気持ちに上手に寄り添うことで、本人の自立への意欲を刺激し、リハビリを行うという視点も大事です。
それでもいつかは、排泄が自分ではやりきれないときがきます。このとき、要介護者は、恥ずかしさや情けなさを感じます。結果として自信を失い、排泄をがまんしてしまったりすることもあるようです。排泄は、ただ不要なものを外に出すというものではなく、人間にとって非常に個人的な行為なのです。
排泄は、普通はトイレで行われます。トイレは、個人的な環境が守れるように設計されています。特に、排泄行為そのものはもちろん、排泄にともなう匂いや音が外にもれないことが大事です。介護においては、ポータブルトイレの使用やベッド上での排泄などが必要となることがあります。そのとき、排泄環境の整備が重要になるのは、当然でしょう。
近くに人がいたり、人の気配があるだけで、私たちは排泄にストレスを感じます。オフィスや駅の、複数の個室があるトイレを使用するとき、自分以外に誰もいないときの安心感を思い出してください。他者に遠慮なく排泄できることは、私たちにとって快感でもあるわけです。介護においても、排泄をせかしたりすることのないように配慮したいです。
自分で排泄がうまくできなくなると、外出するのが怖くなります。結果として引きこもりがちになり、地域社会とのネットワークも切れてしまったりもします。たとえ排泄がうまくできなくなったとしても、オムツや多目的トイレの上手な活用などを通して、なんとか外出の機会を増やしていくことが大事です。
自分で排泄がうまくできなくなったとき、要介護者は、自分の排泄が他者にどのように受け止められているのかを敏感に感じます。これを通して、自らが生きている意味があるのかを問うほどに、重大な局面なのです。大げさに感じられるかもしれませんが、これは事実です。
介護者(家族)として、ここの対応を誤ると、要介護者は極端な意欲の喪失に至ったり、また、極端な依存状態に向かってしまったりもします。介護のプロは、この点をよく把握しています。しかし、介護の素人である家族は、意外と軽く考えていたりするので注意が必要です。
要介護者の排泄というイベントに、どのような関わりをするのかは、要介護者の生きる自信や、存在の肯定に直結しています。まずは、ケアマネやヘルパーに、排泄との関わり方について注意点を教えてもらうようにしましょう。その上で、地域で排泄に関するセミナーなどがあれば、積極的に受講することを検討してみてください。
※参考文献
・建帛社, 『「排泄」という生活支援』
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