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神奈川県の介護施設で、入居者による殺人未遂事件が発生してしまいました。ニュースが示唆していることから、容疑者は認知症を患っていた可能性が高そうですが、プライバシーの問題から、現時点では本当のところはわかりません。以下、神奈川新聞の記事(2019年9月18日)より、一部引用します。
入所する介護施設で他の入所者を切り付けて殺害しようとしたとして、旭署は18日、殺人未遂の疑いで、横浜市旭区上白根町、無職の男(84)を現行犯逮捕した。調べに対し、施設の食事量に不満があったとの趣旨の話をする一方、「殺すつもりはなかった」と供述、容疑を否認している。(中略)署によると、施設には、認知症を患ったり肢体不自由になったりした男女17人が入所。同容疑者は昨年9月から入所していた。
繰り返しになりますが、この事件が、本当に認知症の人によるものなのか、また、そもそも事件はどこまで真実なのか、今の段階で確かなことは言えません。しかし今後、認知症の人が急速に増えていく日本では、似たような事件が増加していくこと自体は避けられそうもありません。
認知症の人が起こした事故をめぐる争いとして忘れられないのが、認知症の男性(当時91歳, 要介護4)が電車にはねられて死亡してしまった事故です。この事故に関して、家族による管理監督責任が問えるかどうかが争われました。
最高裁で家族側の逆転勝訴となったものの、途中までは、この認知症の男性の妻(当時85歳, 要介護1)の責任とされ、過失が認められる形になっていたのです。この事故をめぐる裁判の後、こうした事故が起こった場合の保険に加入する自治体(久留米市, 神戸市など)が増えてきています。
これから、こうした事故や事件が増えていくことは明らかなのですが、法的にはどうしていくのでしょう。国としてはっきりと方針を示していかないとならないはずです。特に、認知症につながる病気が原因と考えられる事件や事故の責任を、本人やその家族が負うべきかどうかというところが難しいです。
被害者が出てしまうので、その責任の所在がどこにあるのかが問われること自体は避けられません。今回の殺人未遂事件も、本人はもちろんですが、家族や介護施設のところに賠償請求の内容証明が届き、そこから裁判になってしまう可能性をゼロにすることはできないでしょう。
被害者の受けた被害を賠償することはもちろん、その感情も大事です。しかし認知症の人を介護する周囲の人々に過度の管理責任を求めてしまえば、誰も、法的リスクが大きすぎる認知症の人の介護には関わらなくなります。
認知症の人は、軽度認知障害を入れて、2025年には1,100万人にもなるのです。認知機能の低下が原因で発生する事件や事故については、もはや国が責任を負うしかないのではないでしょうか。個人や家族はもちろん、自治体レベルではとてもカバーしきれないリスクです。
※参考文献
・神奈川新聞, 『介護施設で入所者2人に切りつける 入所者の84歳男逮捕』, 2019年9月18日
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