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介護福祉士の養成校への入学者、ついに定員の4割を切る時代に

介護福祉士の養成校への入学者、ついに定員の4割を切る時代に

定員割れが続いてきたが・・・

現場で活躍する介護のプロとしての資格の中では、特に、介護福祉士という資格が重視されます。しかし、そんな介護福祉士を養成する学校の入学者数は、かなり前から定員割れになってしまっています。平均として、入学者数は、2012年に定員の76%、2016年に定員の50%、そして2018年に定員の44%となっています。

そうして定員割れに歯止めがかからないまま、入学者に占める外国人の割合は増えています。しかし外国人だけでは、減り続ける学生の確保には不十分なようです。ついに、入学者数が定員の4割にみたない自治体も出てきました。以下、信毎webのニュース(2019年9月17日)より、一部引用します。

介護職で唯一の国家資格「介護福祉士」を養成する県内の短大や専門学校で、今春の定員に占める入学者の割合(定員充足率)が37・9%にとどまったことが16日、県への取材で分かった。このところ減少傾向で、4割を切るのは初とみられる。高齢化で介護需要が増す中、介護の質を高め、現場をリードする専門職の育成にも黄信号がともる。(後略)

定員の37.9%というのは、民間の塾などであれば、すでに経営破綻している状態です。学校法人の助成金と税制優遇によって生かされているというのが実情でしょう。こうしたところにも、見えない税金がかかっていることは、広く認識される必要もあると思います。

介護福祉士の重要性はもっと広く知られるべき

そもそも介護福祉士は、介護現場に立つ介護のプロとしては最上位の資格です。一般的な介護に加えて、より多くの能力を発揮することが期待されています。こうした能力開発のために、カリキュラムも何度も見直されてきました

介護というと、ケアマネージャーへの注目が集まりやすいと思います。ケアマネージャーは、介護全体を俯瞰して、介護の計画(ケアプラン)を作成する重要な仕事を担っています。ただし、ケアマネージャー自身は、介護の現場で、介護をすることは(基本的には)ありません。

これに対して介護福祉士は、介護現場にあって、介護のみならず福祉のプロとして、現場から介護全体の高品質化を目指す人々です。ケアマネージャーも重要ですが、最終的に、介護の質を決めるのは現場を切り盛りしている介護福祉士です。彼ら/彼女らの存在は、もっと社会的に認知されてしかるべきでしょう。

ただ、介護の現場はあまりにも忙しいのに人手不足ということもあって、本来のより高いレベルの仕事にまで手が回っていないというのが実情でもあります。しかもその待遇はなかなか改善されません。そうした現実が、介護福祉士を目指す学生の数を減らすことにつながっています。

現役の介護福祉士たちがより活躍できていること

今後、介護福祉士の養成校の中には、廃校になるところも出て来るでしょう。しかし、優れた介護福祉士たちが増えていくことは、社会的な要請でもあります。そうなると、廃校せずに、なんとか、学生を確保するための施策を打ち出すところも増えていくと考えられます。

そうした時に忘れてはならないのは、マクロの視点です。個別に「こういう方法で学生の確保ができた」といったミクロなテクニック論は、社会的な要請に応えていくという大きくて長期的な目線には意味がないことです。

学生となる側のマクロな希望を考えたとき、学校や学部選びにとって意味があるのは、費用対効果です。要するに、その学校で専門性を得るためにかかるコストと、その学校を卒業した後に得られる対価としての給与が、どういうバランスになっているのかが(研究者を養成する学校でない場合は)最も重要でしょう。

端的に言えば、定員割れが続いているのは、介護福祉士の待遇が悪いからです。このマクロな視点を無視して、広告宣伝費を高めることで学生を確保しようとする施策は、まだ経験の足りない子供相手の倫理的に問題のある行為だと思います。

※参考文献
・信毎web, 『介護福祉士 県内養成に影 今春の入学者 定員の4割未満』, 2019年9月17日

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