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運転をやめたら、介護が必要になる可能性が高まる?

運転をやめたら、介護が必要になる可能性が高まる?

高齢ドライバー問題

高齢ドライバーが、悲しい事故を起こしてしまうことが、社会的に大きな問題になっています。全体としては自動車事故は減っているのですが、その中に占める高齢者の割合が増えているためです。世間的に注目されており、ニュースになるため、問題が大きく認識されています。

高齢ドライバーによる免許の返納が重要という話になってきており、実際に、免許の返納が増えてきています。同時に、介護業界では、車を運転しなくなると、高齢者は社会との接点を失い、結果として介護が必要になる可能性(介護リスク)が高まるという懸念が議論されてきました。

その懸念を、筑波大学などのチームが検証し、その懸念が事実であることが裏付けられました。なんと、運転をやめると、この介護リスクが2倍以上になるというのです。以下、朝日新聞の記事(2019年9月5日)より、一部引用します。

高齢になって自動車の運転をやめた人は、運転を続けた人に比べて要介護となる可能性が約2倍高くなる――。筑波大などのチームがそんな調査結果を公表した。高齢ドライバーによる事故が問題になる一方、「移動の手段を失うと、活動量が減って健康度が下がる」といわれており、指摘が裏付けられた形だ。(後略)

運転をやめることではなく活動量が減ることが真の問題

この検証で調査されたのは男女約2,800人という人数で、2006〜2016年までの長期に渡る追跡調査となっており、信頼性も高いと考えられます。運転をやめて家族による送迎などに切り替えた場合の介護リスクは2.16倍なのに対して、公共交通機関などの利用に切り替えた人の介護リスクは1.69倍でした。

家族による送迎などに頼る場合は、家族に遠慮することになり、活動が減るということでしょう。ただ、公共交通機関などを利用しても、介護リスクが十分に下がらない点は、注目されるべきところです。自分で運転する以外に移動の手段があっても、やはり活動量は減ってしまうことが原因と考えられます。

特に地方や都市の中心部から離れたところでは、公共交通機関を利用しようにも、数が少ないといった問題があることは容易に想像できます。そうなると、面倒にもなりますし、活動量が減るのは、人間として仕方のないことだと思います。

高齢ドライバーに免許の返納をお願いしていくという流れは、やはり、代替となる便利な交通手段とセットでないと、理想からは程遠いというのが現状なのでしょう。そこは、自動運転の実用化しか回答がなさそうです。

自動運転はいつごろ利用可能になるのか

まず、自動運転社会の到来は、2020年代ごろに、高速道路から始まると考えられています。そこから徐々に一般道でも普及してきて、本当に私たちがイメージするような完全自動運転(自動運転レベル5)が認められるのは2030年代後半というのが専門家の見方のようです(ITmedia NEWS, 2018年)。

意外なことに、都市部よりも地方の方が、自動運転技術の適用が難しいかもしれないという話もあるようです。都市部の方が、交通量が多い分だけ、イレギュラーなことが少ないと考えられているからです。

2030年代後半というと、実質的に20年後ということになります。また、完全自動運転だからといって、運転免許が必要ないということになるかもわかりません。そうなると、現在、高齢者の介護問題に悩んでいる人からすれば、現時点では、自動運転には頼れないという結論になりそうです。

とはいうものの、こうして、高齢ドライバーの免許返納が増えて生きている現在、自動運転への社会的な期待が高まっていることは確実です。社会を変えるのは、こうした期待の強さでもあります。なんとか、少しでも早い実現が望まれています。

※参考文献
・朝日新聞, 『高齢者、運転やめたら…要介護リスク2倍 活動量減って』, 2019年9月5日
・ITmedia NEWS, 『で、ぼくらはいつ自動運転車に乗れるんですか? 研究歴20年、金沢大学 菅沼准教授に聞く』, 2018年2月2日

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