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介護保険だけに依存した介護事業が難しくなってきています。介護を必要とする人は急速に増えているにも関わらず、それを支援するための財源は、そう簡単には増やせないからです。この影響として、介護業界では、毎年のように過去最高の倒産件数が更新され続けています。
そうなると、介護事業を経営する経営者としては、介護保険の枠にはおさまらないものの、利用者のQOLのためになるサービスを提供するという保険外サービスを始めるしかありません。もちろん、業務効率化を進めるのは当然なのですが、それにも限界があるからです。
そうした中、千葉市は、介護事業者のうち、どれくらいの割合が、すでに保険外サービスをはじめているのかに関する調査(千葉市, 平成29年)を行なっています。今後、保険外サービスは増えていくと言われ続けていますが、実際には、どうなのでしょう。
この千葉市による調査で得られた127事業所からの回答では、調査時点(2017年8月)で保険外サービスを提供していたのは、32.3%でした。介護事業については、介護事業は社会福祉であるとの回答が70.1%で、介護事業はビジネスであるとの回答19.7%を大きく上回っていることにも注意する必要があります。
ここから、介護事業は社会福祉なのですが、その理想は、介護保険だけでは達成できないため、保険外サービスを提供しているという介護事業者が、一定割合以上は存在していることがわかります。社会福祉だからといって、保険外でビジネスをやってはいけないという訳ではないと考えている経営者もかなりいるということです。
32.3%という数字は、介護事業の経営はかなり苦しいということから考えると、決して大きなものではありません。ただこれは、2年前の数字なので、現在はこれよりも多くの介護事業者が保険外サービスを販売していると考えられます。
今後は、介護保険の枠にとらわれない、保険外サービスがもっと当たり前になっていくでしょう。それは結果として、介護事業者の収益性を改善し、介護職員の待遇問題も改善させます。こうした状況が進み、介護職員の待遇も最低の状態を脱すれば、社会福祉としてビジネス「も」推進することへの抵抗感も減るはずです。
そうして、社会福祉を推進する組織であっても、ビジネス「も」同時に回すことが当たり前になれば、次は、介護業界全体での保険外サービスの成功事例の共有が求められるようになります。結果として利用者のQOL向上に資するサービスであれば、社会福祉の視点からは、それを秘密にしておくのはおかしなことだからです。
介護事業の未来は、利用者のQOL向上のために必要なことを棚卸しして、利用者の資産状況に合わせて、その内側を保険内サービスのみならず、保険外サービスと組み合わせて提供するという形になっていくでしょう。保険内サービスだけに依存していては、そもそも介護事業が継続できなくなるからです。
※参考文献
・千葉市, 『千葉市介護事業所向けアンケート調査 報告書』, 平成29年8月
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