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世界で高齢者がもっとも多い国、中国の高齢化事情

世界で高齢者がもっとも多い国、中国の高齢化事情

中国は高齢化事情は日本よりも厳しい

高齢化率で言えば、日本は世界でもっとも高齢化している国です。しかし高齢者の数に注目をすれば、中国には、2013年1月の時点で、高齢者(65歳以上)の人口が1億2,714万人(総人口の9.4%)になっています。中国には、ほぼ、日本の総人口に近い人数の高齢者がいるということです。

中国には、子供が親を扶養する文化があります。中華人民共和国憲法の第49条でも、親の扶養義務が明記されているほどです。しかし一人っ子政策と長寿化の結果、祖父母が4人、夫婦が2人、子供が1人という「4・2・1家族」が普通となりました。また、急速な経済成長は、過度なインフレと隣り合わせでした。

「4・2・1家族」が長寿化すれば、1人の子供が6人の高齢者を扶養することになります。しかし、この6人の高齢者には、過度なインフレの中で、子育てのための養育費を支払うことで精一杯であることも多く、貯蓄がなかったりするのです。6人の高齢者を1人で扶養できる子供は、一部の富裕層だけでしょう。

高齢者を扶養することが実質的に無理という状態にある人が大多数ともなれば、長年培われてきた文化も変容します。中国において、子供が親を扶養するという文化は、急速に希薄になってきているのです。孫や子供に相手にされない高齢者の問題は、中国では広く社会問題になってしまっています。

介護の社会化が急務になっている

こうした背景から、中国では、過去の文化と決別し、介護の社会化を進めることが急務になっています。中国の国家戦略としても「4・2・1家族」における1人の子供は、6人の高齢者に対してリソースを使うよりも、次の世代となる子育ての方にリソースをかけさせるべきであることが強く認識されているようです。

まず、2000年には、全国規模の高齢者の現状把握のための調査が行われています。この時の調査をベースとして、中国では、1人の子供が6人の高齢者を扶養するということを離れ、社会が、高齢者の扶養を強めていくための施策が打ち出され続けています。

言うまでもなく、それで、全てがうまく行っているわけではありません。依然として中国では増え続ける高齢者への対応が大きな社会問題であり続けていますし、今後も、この問題は大きくなることはあっても、小さくなることはないでしょう。

実際に、民間の介護サービス事業者は経営難の状態にあり、公的な介護サービス事業者は赤字状態が続いています(ハン, 2019年)。中国の高齢者政策においても、在宅介護の比重が大きい(97%と設定されている)のですが、その現実は相当厳しいという指摘も多いようです。

中国には日本以上に深刻な状況がある

中国の指導者層は、介護の社会化が必要であるという認識を持っています。そして在宅介護を中心軸とした方針は固まっているものの、その実態は、かなり厳しい状態にあるようです。簡単な比較はできないものの、中国の介護はすでに、日本以上に深刻な状況にあると考えられます。

ピンチはチャンスです。当然、中国でも介護ビジネスは注目されていて、日本の介護に学びたいという中国系の企業も増えてきています。日本からも、中国の巨大な市場を目指す動きもあり、今後、さらに深刻化していく中国の介護は、ビジネス・チャンスでもあることは明白です。

日本国内だけでも大変な問題なのですが、この問題は、中国をはじめとした世界共通の話であることは、改めて広く認識される必要があるでしょう。そして、ともすれば日本の介護が一番大変な状況と考えられがちなのですが、おそらくは、中国の方がより深刻な状況にありそうだという点にも注意することが重要です。

別の角度から考えると、中国の介護市場は「いつか大きくなる市場」ではなく「すでに日本以上に大きな市場」なのです。日本で受け入れられたサービスを、後で中国にも展開するという戦略では、速度感が合っていないかもしれません。日本での事業と同時に、中国でも事業を展開するような経営感覚が必要かもしれません。

※参考文献
・ハン ヨウ, 『天津市における養老介護サービスシステムの構造および現状』, 大阪産業大学経済論集 = OSAKA SANGYO UNIVERSITY JOURNAL OF ECONOMICS 20(2), 27-46, 2019-03-31

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