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介護は、専門のプロに相談すべきことであるのは当然として、とにかく「ひとりで抱え込まないこと」が大事とされます。とはいえ、周囲からの「ひとりで抱え込まないで」という言葉は、介護の負担に苦しんでいる人にとっては、虚しく響くものです。
では、介護の負担に苦しんでいる人たちは、どうして、周囲の力を頼ることができないのでしょう。この点に関して、興味深いデータが開示されています。キャリコネニュースの記事(2019年8月5日)より、一部引用します。
ジュピターテレコムは8月5日、「人間関係・地域のコミュニケーションに関する意識調査」の調査結果を発表した。調査は今年7月にネット上で実施し、関東・関西在住の20~59歳男女1600人から回答を得た。
「日本人は頼り下手だと思う」と回答した人は68%。また「昔よりも人に頼りにくい世の中になってきていると思う」(67.5%)、「気軽に頼ることができる世の中になったらいいなと思う」(67.6%)と回答した人も7割近くいる。(中略)
頼ることが好きではない理由を聞くと、「相手に迷惑をかけそうだから」(56.3%)、「自分で解決したいから」(51.8%)が多かった。また「恥ずかしいから」(16.8%)、「頼る人が近くにいないから」(15.6%)という人もいた。(後略)
このデータが示しているのは、日本人は、周囲に対してSOSを出すことが苦手で、困難があっても、周囲に頼れない人々だということでしょう。そうした特徴があることを前提として、これからの大介護時代について考えると、これはこのまま放置してよい話ではないことは明らかです。
特に介護という文脈では、多くの人に支援してもらわないと、自分の仕事ができなくなるのはもちろん、生活そのものが破綻してしまいかねません。これを抱え込むと、虐待にも結びつきやすいので、本当に注意が必要です。
ただ、そうしたことがわかっていたとしても、SOSが出せないというところを現在地として対策を考えないと意味がないのでしょう。そうなると、介護に巻き込まれた本人がSOSを出すことを期待するのではなく、周囲から、お節介を仕掛けることが重要になってきそうです。
介護の目的は「心身になんらかの障害をおった人に、生きていてよかったと感じられる瞬間を届ける」ということです。介護のプロは、そのために、様々な専門性を学んでいます。
どのような仕事でも、未経験の新人が、優れた仕事をすることはできません。同じように、介護に関しても、素人がいきなり始めたところで、うまく行くことは少ないのです。そして、優れた介護ができると介護の負担が減らせるというところが重要です。
ここまでは、特に、介護業界の人であれば、十分に認識していることです。今回のデータを受けて考えなければならないのは、だからと言って、本人たちがSOSを出すのを待っていられないということでしょう。
本当は助けが必要な人々が、SOSを出してくれないという前提で、日本の介護を考えていかなければなりません。そうなると(1)助けが必要な人の特定(2)その人の課題と解決に使えるリソースの把握(3)適切なサービスへのつなぎこみ、といった3つのステップが求められるでしょう。
ここで、助けが必要な人の特定に関しては、民生委員やケアマネージャーといったその道のプロだけに依存せず、企業の人事部など、より広くセンサーをはりめぐらせる必要がありそうです。特に企業の人事部にとっては、これまでにない新しい役割なだけに、政府主導のガイドラインの作成なども重要になるでしょう。
課題の解決に使えるリソースについては、プライバシーの問題もあって簡単ではないものの、とても重要です。特に、勤務する企業が、どのような両立支援体制を持っているのかについては、介護のプロとしても把握しておきたい部分です。中長期的には、企業の人事部と、現場の介護職が連携するような形も求められて行くと考えられます。
※参考文献
・キャリコネニュース, 『外国人の7割「日本人はもっと人を頼っていい」 日本人が頼りたくない理由「迷惑をかけそう」「一人で解決したい」』, 2019年8月5日
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