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スポーツ観戦が持っている未知の効果

スポーツ観戦が持っている未知の効果

スポーツの意義について

スポーツという言葉は、本来、日々の生活から離れることを意味するラテン語である「deportare」というものから派生した英語です。このラテン語には「気晴らし」といった意味があります。実際に、なんらかのスポーツをしたり、スポーツを観戦することで癒されている人は多いはずです。

ただし、これを進化心理学の側面から考えると、違った見え方がします。それは、特定のスポーツは、人間に「気晴らし」をもたらすために成立したのではなく、逆に、理由はわからなくても、人間に「気晴らし」を与えられるものだけが、淘汰を勝ち抜いて生き残っているという視点です。

今、人類史による淘汰を乗り越えて残っているスポーツには、それだけの効果があるということです。進化心理学的にも、その真の効果は、私たちが知っている以上に、ずっと大きいと考えるのが自然です。ただ私たちは、それを「気晴らし」としか表現できないというだけの話です。

生きる意味は与えられているのではなく見出すもの

結局のところ、私たち人間が「生きる意味」というのは、誰かに与えられるものではなく、自分自身で見出すものだということなのでしょう。スポーツというのは、そうした自らの選択によって生み出した意味の最たるものです。

つまりスポーツは「気晴らし」ではなく、むしろ、私たちの多くが共感できる「生きる意味」に直結している可能性があるということです。だからこそ、自分が弱っていて「生きる意味」に思い悩むような時こそ、スポーツに近づくことが重要だと思うのです。

ここで、面白い研究結果が発表されています。たとえ、自分があまり興味のないスポーツであったとしても、生で(リアルで)スポーツ観戦をすると、様々な心理効果が認められるというものです。以下、excite newsの記事(2019年8月4日)より、一部引用します。

早稲田大学スポーツ科学学術院のチームは、応援する目的が無くても、高齢者が球場に足を運んでプロ野球を観戦することで、認知機能や抑うつ症状が改善される効果があることを確認した。(中略)

高齢者になると体力が衰えて、外出する意欲が低くなり、出不精になりがちだが、生で観戦すると楽しいし、心も体もリフレッシュできる。今回の実験では、誰もがそう思っていることを科学的に初めて実証した」として、日本老年医学会の国際学術誌『Geriatrics & Gerontology International』に研究成果を発表した。(後略)

スポーツの素晴らしさは、スポーツ以外では表現できない

先の研究結果は、テレビではなく、生で観戦することの意義を示したものでした。生でなければならない理由があるということです。生の部分を、なんらかのフィルターを通してしまうと、それだけ、スポーツの持っている意味が失われるという証拠でもあります。

それは、別の表現をすれば、スポーツの素晴らしさは、スポーツ以外では表現できないということでしょう。その場にいることから、遠く離れれば離れるほどに効果が失われるのですから、これは、この研究結果が示している重要な側面ということになります。

理屈は抜きにして、生でスポーツ観戦をしてみるのはどうでしょう。その場でしか味わえない、言葉で表現できない高揚感がきっとあるはずです。特に「生きる意味」といった、人間にとって非常に重要な部分が弱っている時にこそ、威力を発揮するかもしれません。

※参考文献
・excite news, 『応援しなくても…野球観戦「高齢者の認知機能や抑うつ改善」早稲田大』, 2019年8月4日

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