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社会保障給付費は、年金・医療・介護のために拠出される国からのお金です。財源は、広い意味での国民の税金であることはいうまでもありません。問題は、少子高齢化によって、この社会保障給付費は過去最高を更新し続けているというところです。まずは以下、日本経済新聞の記事(2019年8月2日)より、一部引用します。
国立社会保障・人口問題研究所は2日、年金や医療、介護などの社会保障給付費が2017年度に120兆2443億円となり、前年度と比べて1.6%増えたと発表した。(中略)伸びが大きかったのは「福祉その他」のうち「介護対策」。伸び率は4.1%で、前年度より2ポイント上回った。
こうして介護に引きずられる形で、社会保障給付費が増えるのは仕方のないことです。特に、今回の「介護対策」という費目には、介護業界の待遇改善のためのお金も含まれています。また、年金の運用は(今のところは)うまく行っています。
今のところ、この社会保障給付費は、世間一般では大きな話題にはなっていません。徐々に厳しい状態になっているので、あまり実感として効いていないことが原因でしょう。しかし中・長期的には、本当に恐ろしい未来につながっているのです。
こうした社会保障給付費の推移は、驚くべき速度で上昇を続けています。以下、厚生労働省の資料(社会保障給付費の推移)を転載します(著作権法32条第2項により、資料をそのまま転載します)。なお、介護のための給付は「福祉その他」の項目に含まれています。
今の私たちは、平均で年間約100万円が、社会保障の財源として徴収されているということです。これは、ここで止まることはなく、特に2025年以降は、これまでとは異なる速度で、社会保障給付費が跳ね上がる可能性が高いのです。
理論的には、こうして徴収される社会保障のための財源は、平均年収を上回ることはできません。しかし日本の平均年収は、ここ20年くらいの期間をかけて下がってきており、現時点では400万円を少し上回る程度です。
極端な話ではなく、年収の半分くらいまでが、年金・医療・介護のために徴収される未来は、そう遠くありません。しかも、そこで徴収が止まることなく、さらに増え続けていく可能性さえあります。
まず、年金・医療・介護を必要とする人がそれだけいるという事実は、受け止めないとなりません。しかも、実際に給付されるお金では足りないという話は、よく耳にします。とにかく、今後も、年金・医療・介護を必要とする人が増えていくわけですから、このグラフは、右肩上がりを続けるでしょう。
問題は、こうして増え続ける社会保障給付費を支えている、国民1人あたりの負担には、どこかで限界があるということです。年収の半分が社会保障給付費として徴収される状態が、果たして、国民の多くに受け入れられるでしょうか。どこかの時点で、政権を揺るがす問題に発展するでしょう。
高らかに減税をうたう政治家が政権を取る可能性は、日に日に高まっているということです。そうなった時、年金・医療・介護を必要とする人は、自動的に切り捨てられるということになります。財源がないのですから、どうにもなりません。
悲しいのは、これまで、高額な税金を払ってきた現役世代が高齢者になる頃と、こうした減税の動きが重なってしまいそうだというところです。特に団塊ジュニア世代が高齢者になる頃には、それが顕著になっていることでしょう。
私たち人間には、自分の未来のことでも、他人のことのように感じられるという傾向があることが、脳科学によって示されています。団塊ジュニア世代の悲劇は、就職氷河期からの非正規労働では終わらない可能性が高いにも関わらず、それはどこかの他人の話のように感じられてしまうのです。
しかし、いざ、自分たちが切り捨てられる立場になってしまった時になって「おかしいじゃないか!」と叫んでも、無い袖は振れません。仮にその時、公務員を全員クビにしたとしても、公務員の人件費総額は、国と地方を合わせても年間40兆円にもなりません。それでも、足りないのです。
年金も足りず、仕事もないとなれば、誰の生活も成り立たなくなるでしょう。そこに医療や介護が必要という場合は、それらをかなりの程度まで諦めることになります。介護を諦めるということは、ほとんど死を意味します。そこまで行けば、富裕層は、略奪のターゲットになるかもしれません。
これは、贅沢ができなくなる程度の話ではありません。道端に死体が転がっていることに慣れてしまうような、日本の末期的な状況です。そうした日本の未来を出現させないためにこそ、今、私たちは、官民の壁を超えて、日本の構造を大きく変化させないとならないのです。残されている時間は、そう長くはありません。
※参考文献
・厚生労働省, 『社会保障給付費の推移』
・日本経済新聞, 『社会保障給付費1・6%増の120兆円 介護伸び大きく』, 2019年8月2日
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