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日本介護クラフトユニオンが発表した介護業界の平均年齢がニュースになっています。ニュースによれば、介護現場の平均年齢は46.2歳とのことですが、そもそも、日本全体の平均年齢が46〜47歳なのですから、本当の意味では、ここにニュース性はないように思います。
介護業界における平均年齢という意味で、本当に問題なのは、訪問介護を担うヘルパーの平均年齢です。この訪問介護のヘルパーの平均年齢は58.1歳で、こうしたヘルパー全体の過半数が60歳以上というのが実情です。
訪問介護は、在宅介護を進める上で要となる職種です。老人ホームのような施設介護であれば、複数の人材が1人の高齢者を介護するため、未経験の人材でもそれなりに仕事があります。しかし訪問介護は、1人の人材が複数の高齢者の介護をするため、それだけの知識と経験が求められるのです。
こうした、介護業界の「宝」とも言える訪問介護のヘルパーが、高齢化によって、介護をする側からされる側に回りつつあるというのは、恐ろしい事実として広く認識されるべきことなのです。介護業界は人材不足と言われることが多いですが、人数の問題だけでなく、知識や経験といった側面でも人材不足があるわけです。
こうした状況になっている原因の大きな部分が、介護業界の低賃金にあります。介護業界の低賃金については、日本における63の全業界の中でダントツの最下位であるという指摘があります。近年、いくつか待遇改善の施策がありますが、不十分です。
こうした低賃金が、介護業界の平均年齢を押し上げていく可能性は否定できません。少子化によって若者の数は減っているのですから、そうした若者は、自分の働く環境を選べる立場にあります。そうした中で、低賃金の介護業界が選ばれる可能性は高くないでしょう。
では、介護業界で働く人々は、こうした低賃金について、どう考えているのでしょうか。今回の日本介護クラフトユニオンによる発表は、この点についても言及していました。以下、朝日新聞の記事(2019年8月2日)より、一部引用します。
介護の現場で働く人の平均年齢は46・2歳――。そんな調査結果を1日、介護職員らの労働組合「日本介護クラフトユニオン」が発表した。月給制では43・6歳、時給制では51・4歳。介護の担い手の高齢化が浮き彫りになった。(中略)
「働く上で不満はある」と答えた人は、月給制の80・0%、時給制の62・1%にのぼった。いずれも最も多かった理由は「賃金が安い」で、「仕事量が多い」が続いた。
このまま、大きな改革がないまま、成り行きで進んでしまうと、日本の介護は大変なことになってしまいます。まず、在宅介護を支援してくれる熟練のヘルパーの数は、圧倒的に足りなくなります。しかし、国としても、そこにかけられる財源がないということは動かせない事実です。
そうなると、熟練のヘルパーは奪い合いということになります。そうなれば、混合介護や保険外の介護の市場ばかりが大きくなり、プロによる介護の支援を受けられるのは富裕層だけという未来が待っています。
成り行きでは、本当にそういう未来になります。そこで、親に介護が必要になった人は、誰かに頼れなくなる可能性も高いのです。そうなって、介護離職をしてから「どうしてこんなことになっているんだ」と嘆いても遅いのは明白でしょう。
仕事と介護を両立していくためには、どうしても、介護業界の存在が必要です。しかしもはや、介護業界は、現状を維持するだけでも難しく、このままでは、介護を必要とする人が急増するにも関わらず、介護業界は衰退してしまいます。
すでに、介護保険事業を行っている社会福祉法人のうち、32.9%が赤字となっています。低賃金なのに、赤字なのです。これ以上、通常の経営努力では、どうにもならない状況になっています。どうしても、成り行きではなくて、大きな改革が求められているのです。
※参考文献
・朝日新聞, 『介護の働き手、平均46.2歳 進む高齢化、賃金に不満』, 2019年8月2日
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