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介護に関わる上で、決して無視できないのが、高齢者福祉の3原則(アナセンの3原則)です。詳細はリンク先を読んでいただくとして、その中身は(1)生活継続の原則(2)自己決定の原則(3)残存能力活用の原則です。
これら3つの原則を守っていくことが、介護を含めた高齢者福祉の根幹です。逆に言えば、これまで営んできた生活に大きな変化があるとき、選択肢がなくなるとき、そして能力が活用されていないときに、他者による支援が必要となります。
心身になんらかの障害を負ったとき、こうした支援が必要になることは誰にでもわかることでしょう。そうしたとき、私たちは、要介護認定の申請を行い、高齢者福祉の3原則を、できる限り守ろうとします。介護のプロは、このための専門性を身につけるため、日々努力をしています。
ただ、高齢者福祉の3原則が危機にさらされるのは、何も、心身になんらかの障害を負ったときだけではありません。典型的には、定年退職が、この危機に相当します。なぜなら、これまで営んできた生活が大きく変わり、まだ元気なのに、持っている能力を活かす場が失われることが多いからです。
大事に育ててきた家族とも言えるペットが他界したときなども、危機になります。ペットの世話という重要な仕事がなくなることは、これまで維持してきた生活の継続ができなくなるということでもあるからです。また、養育の機会というのは、孤独を癒すことに大きな意味がある(ウェイスの6因子)ことも指摘されています。
家事がきつくなってきたからということで、家事代行サービスを導入するということも、高齢者の場合は危機になりえます。生活が変わるだけでなく、残存能力の活用も危なくなるからです。良かれと思ってのことでも、しっかりと考えないと、返って悪い結果にもなりかねないのが高齢者福祉なのです。
介護というと大げさに感じられても、ケアという言葉であれば、より広い意味で認識できるでしょう。親が定年退職をした後、ペットが他界したとき、家事代行サービスを導入するときなど、親が新しい生活のリズムをつかむまでは、ケアが必要になります。
こうしたタイミングを逃してしまうと、結果として、心身に障害を負うリスクが高まってしまい、介護としても重度化してしまう危険性が高まります。要するに、こうしたタイミングにおいては、普段よりも、親子のコミュニケーションを密にした方が良いということです。
難しいのは、介護ではなく、こうしたケアが必要なタイミングでは、多くの人が、介護の専門家との人脈を持っていないということです。自然と、こうしたケアができる人の場合は、親の介護リスクもそれなりに下げることができるかもしれません。しかし、そうした人は少数のはずです。
日本では、まだ、定年という概念が存在しています。今後もしばらくは(解雇規制が撤廃されるまでは)定年という概念は存在し続けるでしょう。しかし、特に定年は、高齢者福祉の3原則にとって大きな危機であり、適切なケアを行わないと、介護を必要とする人を増やしてしまうことにつながりかねないのです。
定年にどのようなリスクがあるのか、政府は、企業に対して教育の義務を負わせても良いと思います。これからの高齢者は、自衛の手段としても、高齢者福祉の3原則を危機にさらさないように、定年後の人生を再設計する必要があることを認識することも重要でしょう。
ある意味で、定年後に豊かに暮らすためには年金だけでは足りないという事実は、こうした教育への期待を高めるものと考えられます。生涯現役であることは、金銭面だけでなく、むしろ、高齢者福祉の3原則に照らしても、本人のためになることだからです。
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