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認知症の人は「他者との関係性を構築する機能」に問題を抱えてしまう

認知症の人は「他者との関係性を構築する機能」に問題を抱えてしまう

認知症とは何かという問題

認知症とは、まず、脳内で発生する様々な病気の症状に対する名称です。認知症という病気があるわけではなく、あくまでも症状であり、その背景には多数の病気が原因として存在しています。そうした中で「認知症とは何か」という定義のところは、曖昧で難しいものになってしまっています。

そうした中、群馬大学大学院保健学研究科の山口春保教授は「社会脳の障害」としての認知症の理解を提唱されています。他者との関係性を重視してきた人類は「他者とうまくやっていくための認知機能(社会脳)」を発達させました。認知症とは、ここに障害を負うことと考えることができるのです。

社会脳に障害を持つということは(1)他者に共感・同情できなくなる(2)自分の感情を抑えられない(3)他者の行動の意図・背景を理解できない(4)社会のルールを尊重することができない(5)自分の行動を振り返って反省することができない、ということです。

社会脳に障害のある人と関係性を発展させる

社会脳に障害を持ってしまうと、先に述べた通り「他者とうまくやっていくための認知機能」が弱まってしまいます。しかしこれは、本人が「他者とうまくやっていきたくない」という強い意志を持ったわけではないことには、特別な注意が必要です。

「他者とうまくやっていくための認知機能」が弱まっている人との交流には、こちら側が歩み寄ることで、関係性を維持し発展させることが可能です。この時、むしろ愛し合う家族の方がうまくいかないケースもあることは以前も指摘した通りです。

基本となるのは「あなたのことを大切に思っています」ということをストレートに伝えることです。認知症に苦しむことになる前であれば、そうしたことは態度や行動から伝わるものです。しかし認知症は、そうした相手の意図を推測する機能を弱らせてしまうのです。

比喩、皮肉やお世辞は通用しなくなる

こうして社会脳の機能が阻害される結果として、認知症の人には、比喩、皮肉やお世辞が通用しなくなります。比喩のように、論理的には離れている2つの事象を抽象化し、その間に共通項を見つけるような作業ができなくなる事は、なんとなく理解できるでしょう。

ただ、皮肉やお世辞まで通用しなくなるという部分は、意外と知られていないのではないでしょうか。もちろん例外はありますが、認知症の人に、皮肉やお世辞のつもりで「かっこいいですね」と伝えると、そのまま言葉の通りに理解します。

その意味では、認知症の人とのコミュニケーションは、できるだけシンプルに伝えないと伝わらないということを認識する必要があります。褒めたり、感謝したり、ポジティブな言葉がストレートに伝わるので、ここは意識したいところです。

※参考文献
・山口春保, 『”関係性の病”としての認知症』, vol.20, No.4, 2015, 訪問看護と介護

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