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人間は自分の未来のことでも他人ごとのように感じる

人間は自分の未来のことでも他人ごとのように感じる

介護のことを考えるべきなのに・・・

日本はこれから、大介護時代に突入します。介護業界では2025年問題と呼ばれているものです。日本人の場合、75歳以上になると、介護を必要とする人(要介護出現率)が急に増えます。そして、人口ボリュームの大きい団塊の世代が、この75歳になるのが2025年なのです。

介護には、1人あたり平均で800万円程度のお金がかかることもわかっています。先に話題となった「定年後には、年金以外に2,000万円の貯蓄が必要」という話には、こうした介護のための費用は含まれていない点にも注意が必要です。

多くの人に、介護の問題がのしかかってきます。この負担を少しでも減らすためには、早めの準備が必要になってくるのですが、実際に介護の準備をしている人は、まだまだ少数というのが実情です。これは介護をすることになる子供の世代だけでなく、介護されることになる親の世代にも見られる傾向です。

また、日本そのものも、少子高齢化の影響で、衰退局面にあります。今と同じような生活を維持するだけでも難しいはずで、社会福祉の劣化は避けられない状況です。それでもなお、そうした危機的な未来に対して具体的な準備をしている人は多くなさそうです。

人間は自分の未来でも他人ごとのように感じる

受験勉強を思い出してみてください。しっかり勉強して、第一志望に合格した人もいるかもしれません。ただ、多くの人は「もっと早くから受験の準備をしておくべきだった」という後悔もしているのではないでしょうか。社会人になってからも「あの時にもっとやっていれば」という後悔はつきまとうものでしょう。

同じようなことが、介護でも起こります。介護経験者の多くが「もっと早くから介護の準備をしておくべきだった」と感じているのです。サライによる調査(1,001人を対象)では『知識不足だった(64.4%)』、『バリアフリーに取り組んでいなかった(14.2%)』、『介護費用を貯めていなかった(13.0%)』という結果になっています。

このように、人間は自分の未来でも他人ごとのように感じ、しっかりと準備することができないという傾向は、実は、脳科学的な側面からも研究されています。以下、GIGAZINEの記事(2014年1月30日)より、一部引用します。

Hershfield氏は「fMRI」という脳や脊髄の活動に関連した血流動態反応を視覚化する方法を用いて、「現在と未来について考えている時における脳の活動」について調査を実施。Hershfield氏の率いる研究チームが注視して調査したのが、脳の中でも内側前頭前皮質と前帯状皮質と呼ばれる領域で、人間が自分のことよりも他人について考える時により活発に動く部分です。

調査の結果、現在ではなく未来について考えている時に、脳の内側前頭前皮質と前帯状皮質がより活発に動いていることわかり、「他人について考える時」と「未来について考える時」に働く脳の領域が同一であることが判明。Hershfield氏によると、脳では将来について考える時でも、芸能人について友人と話す時とほとんど変わらないレベルの神経活動が行われているとのことです。

だからこそ強制加入に意味があった

こうした傾向が、脳科学的にも明らかになりつつある状態で「自己責任で準備すべき」というのは、おかしな話です。こうした問題が、人間の遺伝子に書き込まれた傾向であるならば、その問題解決は難しいということになります。

だからこそ、医療保険、介護保険や年金というのは、強制加入という形で運営されてきた歴史があります。背景には、強制的に加入してもらわないと、多くの人は、自分が病気になったり、介護が必要になったり、老後の備えということを自発的に行うことができないという認識があるのでしょう。

ただ、これから難しくなっていくのは、こうした、国が設計して運用している強制加入の保険だけでは不足してしまう可能性が高まっているということです。事実として、医療や介護に必要となる自己負担の割合は増えてきています。自己負担部分が増えるということは、自己責任社会に近づいているということでもあるわけです。

今後の日本を考えるとき、大きな奇跡でも起こらない限り、個人には、自分で自分の未来を想定し、それに対して必要な準備をすることが求められます。それは難しいことであり、少なからぬ人が漏れ落ちる可能性が高いのですが、他の方法がないというのが日本の現在地になってきています。

※参考文献
・サライ, 『介護をする際に後悔したこと|第3位は「介護費用を貯めていなかった」第2位は「バリアフリーに取り組んでいなかった」第1位は?』, 2019年3月28日
・GIGAZINE, 『「自分の未来は他人事」を科学的に証明』, 2014年1月30日

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