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景気の悪化を前提として、オリンピックを考えておきたい

景気の悪化を前提として、オリンピックを考えておきたい

2019年の1〜3月期のGDP(国内総生産)

景気の判断には、GDP(国内総生産)という指標が用いられることが多くあります。このGDPとは、簡単に言うと「一定期間内における国の儲け」です。このGDPが、過去よりも大きくなっていれば、国全体の儲けが増えているということになりますから、景気が良いと判断されるわけです。

内閣府は、このGDPを定期的に発表しています。そして、5月20日には、2019年の1〜3月期のGDPが発表されています。結果は、実質の成長率が前の期間よりも2.1%増加(年率換算)しており、この数字だけを見ると、景気が良くなっているように思われます。

しかし、もう少し深く読むと、そんな楽観視はできないことが認識できます。個人消費、設備投資、そして輸出が全てマイナス成長であり、減っているのです。これらの、本来であれば国を儲けさせる要因が軒並みマイナスなのに、全体としてはプラス成鳥になっているのは、輸入が大きく減っているからです。

2019年の1〜3月期は、企業に例えるならば、売上が減っているところで、コストを抑えたら、利益(儲け)だけが増えたという状態です。今後の景気動向を考えることは重要です。今回は、その上で、オリンピックまでに見ておきたいことを簡単に述べてみます。

個人消費が伸びる要因は少ない

今後、オリンピックまでの期間において、個人消費が伸びる具体的な理由はありません。特に、2019年10月から消費税が10%になります。増税前の駆け込み需要はあるでしょうが、それも一時的なものです。オリンピックまでの期間は、この増税が、個人消費に悪影響をもたらします。

また、日本では二極化が進んでいることもあって、平均年収は少しずつ下がってきてしまっています。人工知能などの自動化技術の実用化にともなって、大規模なリストラも増えてきました。労働力が不要になる方向にありますから、平均年収が低下して行くことは避けられないでしょう。

そして何より、高齢化によって、年金の総額はもちろん、医療や介護にかかる国の社会保障費が上がります。これは個人の視点からは、実質的な増税となります。年収は減るのに、実質的な税収が下がれば、自分の意思で自由に使える可処分所得は減ってしまいます。

こうして、可処分所得が減って行くことが(ほぼ)確実となっているところで、個人消費が伸びることは考えにくいわけです。民間の介護保険といった領域は成鳥し、そこでの消費はあるでしょうが、日本全体の景気にとっては、限定的な影響しかありません。

輸出の増加だけが希望になっている

以上のように、日本国内だけでは、お金は回らないと考えられます。そうなると、国外からのお金に期待するしかありません。それが輸出です。当然ですが、輸出が増えると、お金が外から日本にもたらされることになります。そのお金は、個人消費や設備投資にプラスに働きます。

そうした中、日本から、業界レベルでの輸出が期待できるのは、介護業界くらいです。介護業界は、実質的に税金でできている業界です。その税金を介護サービスへの消費ではなく、介護業界を輸出産業に育てるための投資として考えることができないと、日本の景気は、悪化して行くだけということにもなりかねません。

ここで、介護サービスの輸出も大事なのですが、サービスの輸出には、どうしても人材を海外に派遣する必要が出てきます。介護業界の人手不足を考えると、こうしたサービスの輸出に携わる人材の確保が困難になりそうです。ただ、ここは自動化技術の発展によって、急速に回復する可能性もあります。

これに対して、介護ロボットなどの装置産業は、本来、日本のお家芸です。装置産業は、効率化された開発と生産があれば、それほど人手をかけなくても、輸出で儲けることが可能な産業です。介護サービスの輸出には壁が多いですが、介護ロボットの輸出については、時間の問題と言えそうです。

そしてオリンピック後の日本が出現する

オリンピックというイベントの特徴は、建設や建築に代表される建設投資が、本来のニーズに対して前倒しされるということにあります。前倒しですから、オリンピックには、その直前の数年間の景気を押し上げるという意味があります。

ただそれは、給与の前借りに似ています。前借りしてしまったお金は、後の人生を苦しいものにさせるでしょう。これと同じことが、オリンピック後の日本の建築や建設業界には起こってきます。ここに、震災後の復興需要の終わりも重なってきます。

オリンピック後、2025年問題も顕在化してくるでしょう。そうなると、さらに低下していく平均年収と、増加していく社会保障費の板挟みで、個人消費に期待できることはありません。そもそも失業せずに自分のキャリアを続けることさえ難しくなっていくでしょう。

こうした背景から、オリンピック後には、介護業界への注目度がいやでも高まると考えられます。それは日本にとって大きな危機であり、最後の希望でもあるからです。介護業界には、これまでとは違った人材も参入してくるため、荒れる面もあるでしょう。ただそれも、時代の必然なのだろうと思います。

※参考文献
・日本経済新聞, 『1~3月GDP、年率2.1%増 個人消費は0.1%減』, 2019年5月20日

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