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藝大生が高齢者と暮らすサ高住がある?東京都足立区

藝大生が高齢者と暮らすサ高住がある?東京都足立区

多世代同居型の集合住宅

高齢者が子供や若者と関わりをもつ多世代交流には、多くの可能性があります。日本でも、少なからぬ多世代交流の事例が好意的に報告されてきました。とはいえ、デイサービスなどでの一時的な交流を超えて、高齢者施設で多世代が同居するようなケースは、日本ではまだ珍しいものでしょう。

とはいえ、多世代同居型の集合住宅には、多くの人が可能性を感じてきました。実際にオランダやノルウェーといった海外では、介護が必要な高齢者と若者が同居するという事例が先行的に動いています。そうした中、日本でも、多世代同居の事例が出てきているようです。以下、女性セブンの記事(2019年7月1日)より、一部引用します。

サービス付き高齢者向け住宅『SOMPOケア そんぽの家S王子神谷』(東京都足立区)に若いアーティストが入居し、65人の高齢者と暮らしている。これは東京藝術大学とSOMPOケアの産学連携プロジェクトの一環。入居するのは、東京藝大とSOMPOホールディングスによる藝大生と社会人のための履修証明プログラム「DOOR」の修了生。共生社会を支える人材育成を学んだアーティストたちだ。(後略)

アートやデザインを手がける若手の人材が、大学生のうちに、高齢者との関わりを持つことには、大きな意味があると思います。現代は、世代を超えて心を通わせる交流の少ない時代です。確かに、職場にも世代を超えた関わりはありますが、仕事という文脈を超えての交流が生まれることは稀でしょう。

今回の多世代同居の新しいところ

高齢者と若者のシェアハウスといった取り組みは、数は多くないまでも、これまでに日本でも存在してきました。この方向での可能性は大きく、期待も集まっています。問題は、介護が必要な高齢者の側ではなく、そうした高齢者との同居(またはそれに近い状態)を望む人材の確保です。

今回の多世代同居においては、この点が十分に考慮されており、同居する人材としての大学生には、大学の単位(履修証明プログラム)になっているところが重要です。学べることが明確で、それが卒業のための単位化されるのであれば、参加したいという人材も増えるでしょう。

しかし、これと同じようなことが、日本全国でやれるかとなると、そもそも近くに大学がない地域も多く、難しいと言わざるを得ません。では高校生を、中学生をという話にもなりそうですが、未成年の中高生には、保護者ではない高齢者と同居するという部分で、難しいという別の問題もあります。

シングルマザーなどとのマッチングはどうか?

そうなると、次はシングルマザーなどとの同居を検討することになりそうです。シングルマザーには、低価格(場合によっては無償)の住居の提供ができます。ただ、その場合は、高齢者の介護をすることがセットになりそうで、普段の仕事もあるため、過重労働が問題になります。

日中、子供を預けておかなくてもよくなるという考え方もありそうですが、それはそれで、児童による介護労働ということにもなりかねず、ここでも問題が発生してしまいそうです。結局、多世代同居の集合住宅は、日本全国でのスケール化は難しいという話になりそうなところが、残念です。

中長期的には、多世代同居型の集合住宅は、増えて行くことになるでしょう。その時、今回の記事で考えたような問題は、必ず表面化してきます。トラブルも多くあるでしょう。同時に、こうした方法以外のソリューションがないというケースも増えるはずなので、先回りして課題を解決するような制度の設計が求められることになります。

※参考文献
・女性セブン, 『高齢者と藝大生が入居するサ高住「大人の友人ができた」』, 2019年7月1日

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