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科学的介護のためのデータベース構築は成功するか?

科学的介護のためのデータベース構築は成功するか?

データベース「CHASE」

「こうした状態の要介護者に対して、こうした介護を行ったら、結果としてこうなった」というデータを多数収集することができたら、将来の介護の生産性を向上させることが可能になるかもしれません。こうした考え方を特に科学的な根拠に基づいた介護(Evidence Based Care)と言います。

介護のための国の財源は非常に苦しい状況にあり、2025年問題が顕在化する前に、介護の生産性を高める必要があります。この科学的な根拠に基づいた介護は、そうした生産性向上のために重要な役割を担うものと考えられています。

厚生労働省の検討会では、この科学的な根拠に基づいた介護のためのデータベースに「CHASE(Care, Health Status & Events)」という名前を付け、この設置を決定しています。今後、日本全国の介護事業者に対して、この「CHASE」への協力依頼がなされていくことになります。

本当に活用できるデーターベースになるか?

「CHASE」を構築するためには、現場の「こうした状態の要介護者に対して、こうした介護を行ったら、結果としてこうなった」という情報収集が必要になります。この情報収集には、それなりの時間がかかるため、ただでさえ忙しい現場にとっては、大きな負担になることは明らかです。

しかし、そうした負担があったとしても、結果として、介護の生産性が高まるのであれば、その負担は必要な我慢ということになります。問題は、この「CHASE」が本当に現場の介護の生産性向上に役立つのかという部分です。

気になるのは、介護現場の人々と話をしていて困っていることは、特定の要介護者に対して「どのような介護を行うべきか」ではないと感じることです。「CHASE」が解決する課題は、果たして、本当に介護現場の生産性を高めるのかどうか、不安に思います。

高齢者福祉の3原則に対する配慮も必要ではないか

「CHASE」がカバーしているのは、身体介護的な話であって、リハビリの実績などについては、大きな威力を発揮することは明らかなことに思われます。問題は、身体介護は、介護全体の一部であって、本来の理想である高齢者福祉の3原則(アナセンの3原則)は、こうしたデータベースでどこまでカバーされるのかという部分です。

「CHASE」が狙っているのは、科学的介護によって、要介護度を下げることで、介護のための国費を、少しでも抑制することにあるのでしょう。それはそれで、とても大事なことではあります。ただ、それは本来の理想の高齢者福祉とは、また少し違った話でもあります。

究極的には、高齢者を孤独にしないことが、大事な話になってきます。もちろん「CHASE」によって、より効果的なリハビリが行われたりすることも大事です。ただ、介護現場が生み出している、他には変えがたい価値というのが、高齢者の孤独を減らすことであるという部分についても、フォーカスが当たることを願うばかりです。

※参考文献
・メディ・ウォッチ, 『科学的介護データベース「CHASE」の項目固まる、介護版DPCのような「ベンチマーク」分析にも期待―厚労省・科学的介護検討会』, 2019年7月5日

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