閉じる

JR四国がデイサービス事業から撤退

JR四国がデイサービス事業から撤退

JR四国の介護事業参入

JR四国は、人口減少による、本業である鉄道収益の不安を少しでも解消するために、介護事業への参入を行なっていました。参入は2018年の6月で、リハビリに特化した、軽い運動を提供するデイサービスを、高松市と丸亀市に開業していました。しかし、JR四国は、このたび、これらの事業からの撤退を決めたようです。以下、京都新聞の記事(2019年6月28日)より、一部引用します。

JR四国は高齢者向けのリハビリに特化したデイサービス事業から6月末に撤退すると28日までに発表した。社員が必要な知識や技能を習得するのが難しいと判断した。人口減少で鉄道事業が先細りする中、高齢化を逆手に取り昨年参入したが1年足らずで行き詰まった。新たな収益源の確保が引き続き課題になりそうだ。

この2つのデイサービスは、今後も、提携先となっていた企業が引き継ぎ、急な閉鎖はなさそうです。それでも、今後の存続は簡単ではないことは容易に想像できます。地元で、介護を必要とする要介護者にとっては、とても残念なニュースになりました。

人口減少に対する鉄道各社の取り組み

人口減少は、鉄道各社にとって深刻な事態です。特に、定額課金のサブスクリプション・モデルの一つである定期券の購入者が減ってしまうことが、経営上は恐ろしいことです。急行などを整備することで速度を上げ、大量の人を輸送するというビジネスモデルは、終焉に近づきつつあります。

これまでに、鉄道各社が展開してきた基本的な戦略としては(1)沿線住民を増やす(2)大学を誘致し沿線価値を高める(3)沿線に集客施設を呼び込む(4)駅ビルの開発、といったものでした。しかしこれらは、少子高齢化による人口減少に対しては対応できないことは明白でしょう。

もはや、一部の鉄道会社をのぞいて、不採算路線の廃止は避けられないといったところまで来ています。同時に、高齢者の免許返納の議論まで進んでいることを考えると、地方の高齢者の生活が成り立たないという問題が、本当に大きくなって来ているわけです。

鉄道会社の生き残りをかけた介護事業

そうした中、鉄道会社が介護事業に参入するという話は、意外と多く見かけるようになりました。人が集まりやすく設計されている一等地であり、バスなどの交通機関と駐車場が揃っている駅前の土地を持っていることが多い鉄道会社としては、地域の高齢化と合わせて、介護事業の可能性が魅力的に見えるのでしょう。

ただ、介護事業は、そもそも保険点数によって売り上げが(ほぼ)決まっている事業であり、売り上げを高める努力が通用しにくいという特徴があります。このため、コストの高い一等地で開業すれば、返って収益性が悪化するという特徴もあります。また、専門性を持った人材の採用が困難で、採用コストもかさむのです。

地域に、介護のニーズがあることは明らかです。しかし、そうしたニーズを捉えたとしても、収益が上がらないという介護事業の根本的な問題がある限り、鉄道会社にとっては、介護事業への参入は、当初の期待通りにはならないことも多そうです。他の鉄道会社が参考にできる成功事例が出てくることを祈るばかりです。

※参考文献
・京都新聞, 『JR四国、高齢者事業から撤退 1年足らず、収益源課題に』, 2019年6月28日
・市川宏雄, 『人口減少時代への鉄道会社のビジネスモデルの模索』, 都市住宅学97号, 2017 SPRING

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由