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業界再編は進むのだろうか・・・

業界再編は進むのだろうか・・・

大企業だけになることによるデメリット

介護サービスは、上場している大手10社の売り上げを合計しても6,500億円程度にしかなりません。介護業界の市場規模は、公費10兆円と自己負担分の1兆円を足して11兆円程度はあります。そうなると、大手10社のマーケットシェアは6%前後にしかならないのです。介護業界は、中小企業によって成立しているのです。

これは、病院や調剤薬局の業界でも同じです。病院の業界もまた、多数の中小のクリニックで成立しています。調剤薬局も、街中に多数乱立しているのを観察すればよくわかる通り、中小企業が多数ひしめき合っています。

介護、病院、薬局・・・どれも、厚生労働省が管轄している、ヘルスケア業界としてくくることができます。背景には、大企業が業界を寡占してしまうと、エンドユーザーとなる国民や厚生労働省に対して、企業の交渉力が高まってしまうことを避けるという意図があるのかもしれません。

ヘルスケアの領域は、社会福祉と隣り合わせです。そうした社会福祉に近いところでは、経済原理だけで物事が進められない事情があります。例えば、一般の企業のように、エンドユーザーが富裕層だからといって特別視することもできませんし、逆に、社会的弱者を保護する必要があるのが社会福祉の王道でもあります。

本当の意味での大企業が存在しないことによるデメリット

中小企業がひしめき合っているということは、ユーザーからすれば「ここにお願いしておけば安心」といった企業を見つけにくいということです。また、労働者からしても「ここで働いていれば潰れることはない」といった企業を見つけにくいということにもなります。

また、規模の経済が働かないので、業務効率化が進みにくいということもあります。特に中小では高すぎて導入できない基幹業務システムなどのITツールが貧弱になりやすい点は無視できません。さらに人材育成のための研修なども、従業員が少ないと、なかなか導入できなかったりもします。

そして、人事管理、給与計算、税務会計、現金管理といった仕事は、企業の大小に関わらず、必ず必要な業務になります。そうした業務のためのコストは、売り上げ比率として、中小企業の方が大きくなるのは当然です。中小企業の経営からすれば、業務効率化にも限界があります。

よく、ヘルスケア業界はITの導入が遅れているし、研修を前提としたキャリアパスも描きにくいと言われます。その根本的な背景は、ここまで見てきた通り、ヘルスケア業界は中小企業でできているということがあるわけです。

人材紹介や派遣だけが規模を大きくさせてきている

このように、介護業界の再編は進んでいないのですが、ツクイ子会社のツクイスタッフ、エスエムエスなど、介護業界向けの人材紹介や派遣を手がける企業は、業績を急速に伸ばしています。介護業界は慢性的な人材不足に悩んでおり、中小企業は、独自に採用をすることが難しいからです。これはこれで、少し困ったことも起こります。

ヘルスケア業界で、こうした人材系の企業だけが大きくなっていくと、ヘルスケア業界から、人材業界に対して大きなお金の流れができてしまうことです。ヘルスケア業界を動かしているのは、広い意味で、社会福祉財源です。その財源の着地が、人材業界になってしまうことは、厚生労働省としても頭の痛いところだと思います。

ただ、人材系企業に罪があるわけではないことには注意が必要です。それだけ人材ニーズがあり、そうしたニーズを満たすことで、ヘルスケア業界の問題解決に貢献していることは事実だからです。とはいえ、ヘルスケア業界向けの人材系企業が大企業になってしまうと、中小企業は、そうした企業に対して交渉力で負けてしまいます。

ヘルスケア業界に流せる公費(社会福祉財源)は、限界に近づいています。限られた財源を上手にやりくりする必要があるにも関わらず、人材不足によって、そうした財源が、間接的ではあっても人材業界にばかり着地してしまえば、将来的には、おかしなことにもなりかねません。本当に難しい問題です。

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