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介護が必要になった主な原因、認知症が最多に(高齢社会白書)

介護が必要になった主な原因、認知症が最多に(高齢社会白書)

介護が必要になった主な原因

内閣府が発行している平成30年版高齢社会白書(全体版)によれば、介護が必要になった主な原因の第1位は認知症(18.7%)とのことでした。続いて脳卒中(15.1%)、高齢による衰弱(13.8%)、骨折・転倒(12.5%)となっていました。これを男女別にみると、男性の場合は脳卒中(23.0%)が最多となっており、女性の場合は認知症(20.5%)が最多でした(p31)。

あくまでもイメージですが、健康寿命を意識して身体の健康には気をつけていた高齢者も、年齢が進んでくると、認知症の発症までは止められないということなのかもしれません。今後、介護が必要になった主な原因として、認知症の占める割合は増えていくことも予想されます。認知症の予防、根本治療や重度化を遅らせることに繋がる薬の開発が望まれています。

身体が健康な高齢者が認知症になると、その介護は、想像以上に大変なものになりやすいのです。もちろん、ケースバイケースであることは当然としても、身体が健康だと、要介護度が低くなりやすく、介護保険で受けられる介護サービスが不足するという点も見逃せません。しかし、そうした認知症の介護は、介護に関わる人の負担から考えると、相当重たいものにもなり得るのです。

認知症に苦しむ人を排除しない社会へ

認知症に苦しむ人が、普通に暮らせる社会の実現が必要です。そもそも、国民の10人に1人が認知症という状態に近づきつつある日本では、そうした社会の実現は、議論する余地がないほどに、当たり前のことです。問題は、社会の側の認知症に対する理解がどこまで進むかというところでしょう。この部分については、政府も自治体も、かなりの努力をしているところです。

これは、2015年1月に策定された「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて」、別称「新オレンジプラン」にのっとったものになっています。この「新オレンジプラン」は2025年までを視野に入れ、7つの柱でできています。それらの中でも最初の項目が「認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進」なのです(p133)。

これは、認知症に対する正しい知識を備え、認知症の人やその家族に対する支援を行う「認知症サポーター」の養成として具体化されています。2019年3月末日時点で、この「認知症サポーター」は11,442,490人にもなっており、今後も増えていくでしょう。厳しいニュースの多い中で、こうして「認知症サポーター」が急増していることは、大きな希望です。

本当の社会変革が必要

「認知症サポーター」の数が1,100万人を超えていることは心強いです。同時に、この数字は、2025年における認知症に苦しむ人の推計値(軽度認知障害MCIを含む)と偶然の一致を示しています。認知症に苦しむ人1人あたり、ちょうど1人の「認知症サポーター」がいるという計算です。「認知症サポーター」が増えていることはありがたいニュースですが、それだけでは足りないと考えられます。

本当の意味で、認知症に苦しむ人とその家族が、この社会から排除されず、社会全体でケアされていく未来を築くには「新オレンジプラン」を超えて、日本が変わっていく必要があるでしょう。「RUN TOMORROW(RUN伴)」や「注文を間違える料理店」といった啓蒙活動も、さらに活性化させていく必要があります。そうした活動に、より多くの人が関わっていくことも大事です。

中学校の学習指導要領にも、2017年3月より「介護」が導入されています。これは、中学校の技術・家庭科の授業で「介護」が教えられるということです。本当に、官民が一体となって、認知症に対する啓蒙活動が動いています。あとは、ここに企業が入ってくるべきところですが、企業の動きはまだまだ不十分と言わざるを得ません。この点については、政府による企業へのアプローチが強化されるべきでしょう。

※参考文献
・内閣府, 『平成30年版高齢社会白書(全体版)』, 2019年6月

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