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8050問題と言うけれど、50が介護をしていることも多いのではないか?

8050問題と言うけれど、50が介護をしていることも多いのではないか?

クローズアップされる8050問題

8050問題という言葉が、メディアを賑わせています。これは一般には、80代の親が50代の引きこもりの子供の生活を支えていることを示すものです。そうした40〜64歳の引きこもりが、推計で61万人いるということが話題になりました。その61万人が社会に出られるよう、支援すべきだという声も高まっています。

ただ、この話は、問題の片面しか見てないように思います。というのも、80代の親が50代の子供を支えているということもあるでしょうが、逆に50代の子供が、親の介護をしているという側面もあるはずだからです。確かに家計は親の年金だったりするかも知れませんが、生活は、子供の方が切り盛りしているケースもあると考えられます。

言いにくい話ですが「兄弟姉妹の中に親と同居している引きこもりがいて、その兄弟姉妹が親の介護をしてくれているから助かっている」というコメントを聞くことは、意外と多くあります。引きこもりと言うと、ただ一方的に親のすねをかじっているような印象が持たれますが、現実は、双方が助け合っていることもあるわけです。

もちろん、8050問題は一般化することはできません。完全に社会と断絶し、引きこもってしまっている子供の対応を、80代の親がしているという、一般に想像される通りのケースもあるでしょう。ただ、そうした引きこもりと言われる人が、介護を担っていることもあるという事実は、もう少し広く知られても良いと思うのです。

本人の責任とは言えないケースも多い

引きこもりというと、本人が甘えているといった心無い中傷がつきまとうものです。しかし、病気だったり、不慮の事故だったり、いじめだったり、パワハラなどがきっかけで社会との接点を失い、結果として引きこもりになるといった、被害者としての側面もかなりあるのです。

日本の社会は、健康でレールに乗っているうちは、安全安心な社会に見えるかもしれません。しかし、少しでも健康に問題を抱えたりレールから外れるだけで、驚くほどに支援のない、残酷な社会が顔を現したりもします。日本は清潔なところですが、同時に、潔癖にすぎるところがあるのは、誰もが感じたことがあるでしょう。

自分にはそんなことは起こらないというのは、心理学では正常性バイアスと言って、正しくありません。自分だけは特別ということはなく、私たちは、確率論として、自分自身もまた引きこもりになる可能性があるわけです。さもないと、61万人という規模で、このようなケースが発生するはずもありません。

自分自身が、そうした不運を経験すれば、この社会かいかに冷たいかを嫌というほど認識するでしょう。そうした人が、高齢者として社会から断絶し、要介護者として自信を失った親の気持ちを理解し、それに寄り添うということは、十分にありえることだと思います。

8050問題を正確に把握する必要があるが・・・

繰り返しになりますが、8050問題はそれぞれに異なり、50代の子供が親の介護をしているケースがどれくらいあるのかはわかりません。ただ、どうしても主張したいのは、この50代の子供は、ただ一方的に支えられているわけではない(かもしれない)ということです。

もちろん、8050問題は、そのままにしておくことはできません。しかし、支援が必要なのは引きこもっている50代の子供であるという認識は、全てのケースに適用できるものではないと思います。共に暮らし、支え合っている親子の像がそこにあるのであれば、今のメディアで取り上げられているような8050問題の形は、間違っています。

こうした家庭のプライバシーに関する問題は、その実態を正確に把握することが困難な問題でもあります。だからといって、50代の子供を、いかにもダメな人間として報道するばかりなのは問題があると感じます。

親の介護をきっかけに介護離職をし、親元に帰って介護をしていたら、介護が思わず長引いて10年以上の時が過ぎ、気がつけば社会には自分の居場所がなかったということは、誰にでも起こりうるのものではないでしょうか。優しい人であればあるほど、そうした50代になっている可能性もあると思います。

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