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揺らぐ福祉先進国デンマークの現実

揺らぐ福祉先進国デンマークの現実

福祉先進国の良からぬ噂

福祉先進国といえば、デンマークがまず第一に上がることが多いでしょう。デンマークをはじめとした北欧の国々は、高い税率によって「ゆりかごから墓場まで」と言われる理想的な社会福祉を発展させてきました。

そんな福祉先進国に学ぼうと、多くの研究者たちが、北欧の社会福祉を研究してきました。ただ、研究のために出張し、帰国した研究者たちと話をしていると「理想が後退している」という良からぬ噂も聞くようになってきました。

「老人ホームを無くし、全てを在宅介護に」といったノーマライゼーションの流れは、維持ができていないのではないかという意見を聞きます。また、高齢者施設と併設されていたカフェなどは、活用されることなく閉店していたりするという話も聞きます。これらは、一時的な話なのでしょうか。

ベビーブーマーの高齢化

福祉先進国は、高い税率によって維持されています。このモデルは、働いて税金を納める現役世代があってのモデルです。ベビーブーマーが高齢化すれば、それだけ、支える人が支えられる人に回ります。結局、高齢化が進んでしまうと、福祉先進国とはいえ、理想が維持できないということです。

デンマークでも、これまで無料だったサービスが有料化したり、無料で受けられていたサービスを受けられる回数が制限されたりと行った、国民の目から見れば改悪が進んでしまっているようです。以下、ロイターの記事(2019年6月3日)より、一部引用します。

平等なユートピアを模索する世界中の多くの人々にとって、北欧型の福祉国家モデルは、長年のあいだ憧れの的だった。だがこのところ、その北欧モデルに軋みが生じている。(中略)「北欧モデル」は、世界中の左派政治家や活動家の多くから、福祉国家の模範として称賛されてきた。(中略)

デンマークが直面している厳しい選択は、ベビーブーム世代が徐々に退職年齢を迎えている他の北欧諸国でも見られる。不安の高まりを感じつつある有権者は、これまで大切にしてきた福祉モデルを守るよう政治家への圧力を強めている。(中略)

現状維持にさえ失敗している

福祉先進国と言われ、世界中から研究の対象となってきたデンマークでさえ、いよいよ、現状維持にさえ失敗しているということです。現状維持のためには増税が必要で、増税したところで、数年もしたらまた、足りなくなるわけです。

これは、今の日本ととてもよく似ています。もちろん、社会福祉の中身は、デンマークの方が優れている点もあるはずで、日本もそこに学べることもあるでしょう。しかし、そんなデンマークでさえ、現状維持さえ難しいという状態を、これからどうしていくのかということに悩んでいるわけです。

こうした状況を打破するには、ITやロボットによる効率化で、社会福祉の導入コストを下げていくしかありません。そして、ITやロボットを実現するのは民間企業です。そんな民間企業が、日本から生まれてくることが、日本に残されている数少ない希望でしょう。

※参考文献
・ロイター, 『焦点:ほころぶ「北欧福祉モデル」、デンマーク選挙の争点に』, 2019年6月3日

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