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仕事と子育てを両立している人たちにとって、保育園の問題は、非常に大きなものです。日中、子供を預かってくれる保育園が見つからないと、仕事に集中することができなくなるからです。そうした背景から、待機児童問題は、毎日のようにニュースになっているでしょう。
仕事と介護の両立という意味で、保育園に相当するのが、デイサービスです。日中、自宅で一人では暮らせない要介護者を、送迎つきで対応してくれるのがデイサービスだからです。もちろん、正確には保育園とデイサービスは全く異なるものですが、利用する家族の立場からすれば、似ているところがあります。
そうしたデイサービスの中には、家族の出張やレスパイトなどのために、日中だけでなく、夜間であっても、要介護者を宿泊させることで対応してくれる、通称「お泊まりデイ」という存在があります。本来は、短期的な宿泊のあとは、自宅に戻ることを想定されている施設です。
この「お泊まりデイ」を長期利用する要介護者が増えているかもしれないということが、NHK NEWS WEBによって報道(2019年5月24日)されています。短期利用が本来の姿であるデイサービスが、どうして、長期利用されているのでしょう。この報道より、以下、一部引用します。
病気などで自宅で暮らせない高齢者への対応について東京都の社会福祉協議会が都内の支援機関に調査した結果、介護施設に一時的に宿泊できる「お泊まりデイ」などのサービスを長期間利用したことがあると回答したのは30%余りにのぼりました。受け入れ先が見つからず施設を転々とするケースも出ていて専門家などからは対策を求める声が出ています。(中略)
「お泊まりデイ」は介護をする家族が病気になった時などに使われるもので、国のガイドラインでは緊急時や短期的な利用に限るとしています。しかし特別養護老人ホームの空きがないことなどから同じ介護施設に半年以上滞在したり、複数の施設を転々としたりするケースも出ています。(後略)
他に行き場のない要介護者にとって、老人ホーム(施設介護)は、終の住処となりえる選択です。老人ホームとはいえ、実際には様々なところがあり、素晴らしい施設も少なくありません。しかし、月額25万円程度は覚悟しないとならない老人ホームに入居できるのは、一部の富裕層だけでしょう。
公的な老人ホームである特別養護老人ホーム(特養)であれば、富裕層でなくても入居することが可能です。しかし実際には、特養への入居は何年も待つことが普通であり、空きがない状態が続いています。
ほとんどの要介護者は、特養には入れず、また、民間の老人ホームにも入れないのです。しかし、例えば認知症の症状が悪化し、自宅ではとても生活できないという状況にはなりえます。そうした時、本人や家族にとってのセーフィティーネットは「お泊まりデイ」の長期利用ということになります。
そうはいっても「お泊まりデイ」は、あくまでも短期利用を前提とした設計になっているはずです。長期利用されてしまうと「お泊まりデイ」として赤字になってしまうということもあります。また、本当に短期利用しなければならない人にとっては「お泊まりデイ」に空きがないということにもなってしまうのです。
本当の問題は、長期利用をさせている「お泊まりデイ」がけしからんということではありません。むしろ、夜勤手当まで出すと赤字になりかねないのに、要介護者のことを考えて、なんとか対応しているという現実もあるわけです。
本当の問題は、公的な老人ホームが足りていないことであり、また、民間の老人ホームの利用料が高すぎるということです。とはいえ、老人ホームの数を増やしたり、民間の老人ホームに助成金を出したりするということが現実的でない以上、こうした「お泊まりデイ」が長期利用に対応できるよう制度を改変することが重要になりそうです。
※参考文献
・NHK NEWS WEB, 『行き場のない高齢者 「お泊まりデイ」長期利用の実態明らかに』, 2019年5月24日
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