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アメリカでも介護の虐待が増えている?

アメリカでも介護の虐待が増えている?

介護をめぐる虐待の問題について

日本では、介護をめぐる虐待の問題が続いています。実は、高齢者の虐待自体は、世界共通の問題なのです。WHOによれば、世界では6人に1人の高齢者が虐待を受けているというのです。虐待は、深刻な問題であり、かつ、それは世界中で問題になっているという認識が必要です。

そんな虐待について、アメリカの現状が、WEBマガジン、ウィジーでレポートされていました。虐待が急速に増えていること、および、加害者の多くは被害者が信頼をしている人であるという部分が、日本の虐待と似ています。以下、ウィジーの記事(2019年5月26日)より、一部引用します。

CDC(米疾病対策センター)傘下の国立傷害予防管理センターに所属するJoseph Logan氏らの研究チームは、高齢化が進むに伴い虐待を受ける高齢者が急増している事実をCDCが発行する「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」4月5日号で発表した。(中略)

Logan氏らは「近年、高齢者の虐待は多く発見されているが、虐待率の増加は単に人口統計上の問題ではない。加害者の多くは被害者が信頼を寄せている人物である事実に問題の根がある」と主張する。(中略)

Factora氏によれば、移動介助、金銭管理、服薬補助などのケアは介護者の大きな負担になるため、介護ストレスを抱えた家族が身体障害や精神障害がある高齢者を虐待するに至りやすい。虐待は身体的な暴力や殺人のほか、ネグレクト(介護の放棄)や金銭的な搾取など多種多様だ。(後略)

介護うつという問題との関連性は?

介護をしている人の4人に1人(27.4%)が「うつ」の状態にあ流という報告があります。この数字は、介護をしていない人の「うつ」に対して3倍も多い状況です。介護をしていると「うつ」になりやすいというのは、動かせない事実です。

介護の専門家である介護職もまた「うつ」に苦しんでいるという報告もあります。介護に関わる人は、身内でも身内でなくても、精神的に大きなストレスを受けてしまうということなのでしょう。

そうした精神的なストレスが、虐待とどのような関係になっているのかについては、まだわかっていないことも多く、はっきりしたことは言えません。ただ、介護がなければ虐待もずっと少なくなる可能性を考えると、介護のストレスと虐待の間には、なんらかの関係があると推測されます。

具体的な対策は効果を発揮しているのか

世界中でその問題が大きくなっている虐待は、高齢化が進むとともに、減るどころか増えています。その背景には、介護と介護をめぐるストレスの問題がありそうだというところまでは、十分なエビデンスはないものの、推測されています。

そうなると、介護のストレスをどう軽減するのかということが、虐待の対策のひとつになる可能性があるわけですが、では、介護のストレスを減らすために何がなされているのかというと、世界にも、これといった具体的な対策はないように感じられます。

しかし、そうした具体的な対策の登場を待つことはできません。そうなると、介護にストレスはつきものであり、それを抜本的にゼロにしてしまうことはできない以上、ストレスは複数の人間によって分散されるべきというあたりが、すぐにやれることになりそうです。

日本では介護のストレスが集中しつつある・・・

しかし日本においては、高齢者1人あたりに使える社会福祉財源が減りつつあります。そうなると、高齢者1人あたりに関われる介護者(家族やプロの介護職)の数は減っていくことになるでしょう。それは結果として、介護者1人あたりにかかる介護のストレスは大きくなっていくということでしょう。

ITによる介護の自動化に大きな期待が集まってはいますが、実際には、いつ実現されるのかについては、よくわからない状態が続いています。それでも、介護の周辺における書類仕事などは自動化されていきそうですが、介護そのものの自動化は、まだ相当先の話になってきます。

成り行きで、何も具体的な対応はなされないという未来は、本当に悲惨なものになります。どうしても放置してはおけない問題があるにも関わらず、介護と直接関係のない世間は、介護という国をひっくり返してしまうような問題に関心を向けてくれないようにも感じられます。諦めずに発信し続けることも重要ですが、それだけではとても大きな社会変化は起こせないとも思います。

※参考文献
・ウィジー, 『高齢者の虐待が日米で急増、介護者自身をケアすることが急務』, 2019年5月26日

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