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デンマークの「手を出しすぎないケア」

デンマークの「手を出しすぎないケア」

社会福祉先進国デンマーク

社会福祉先進国として知られるデンマークは、そもそも、社会福祉の財源の全てを税金でまかなっています。全て税金でまかなっているということは、税率がとても高いということになります。実際に、デンマークの所得税は50%以上であり、消費税も25%と、日本とは大きく異なる税制になっています。

ちなみに日本の所得税は、年収195万円以下の場合で5%、年収4,000万円超になると45%という具合で、いわゆる累進性になっています。日本の最高税率よりも高い税率が、デンマークの国民には課せられているわけです。

こうした高い税率によって、デンマークでは、医療費、介護費、年金、教育が、すべて税金から拠出されています。デンマークは、富裕層でなくても、安心して暮らせる国になっているのです。さらに、デンマークにおいては、医療・福祉に関わる人材のほとんどが公務員とのことです。

デンマークの「手を出しすぎないケア」

そんなデンマークでは、どのような介護が行われているのでしょうか。その全てを真似することはできないのは当然としても、日本の介護にも参考になることがあるはずです。そうしたデンマークの介護をまとめている論文(石黒, 2019年)があります。その論文から、いくつか、参考になりそうなことをピックアップしてみます。

デンマークにおける介護の進化

デンマークにおける介護には、2回の大きな進化があります。1度目は、1980年代から始まった「施設ケアから在宅ケアヘ」という進化で、高齢者ができるだけ長い期間を自宅で過ごせることを理想とし、その理想に向けた努力がされてきました。2度目の進化は、社会に依存する存在になってしまっていた高齢者を、主体的に生きる存在として捉え直すものでした。

手をポケットに入れたままの介護

デンマークでは、要介護者への至れり尽くせりの介護は、要介護者を依存させてしまうことと認識されています。そのため、デンマークでは、介護をする側は「ポケットに手を入れたままの介護」「手を後ろで組んだままの介護」という言葉がよく使われるそうです。見守りを重視する介護であり、先回りしない、ある意味で「おもてなし」とは逆の介護が行われています。

生活機能回復支援の成功

デンマークのフレザレチャ市は、2008年10月に、高齢者の生活機能を回復させるプログラムを立ち上げ、大成功をおさめています。介護が必要だった高齢者のうち、約43%もの人が、完全に自立した生活を送ることができるようになったのです。完全な自立とまでは行かなくても、機能回復した人も30%も生まれました。フレザレチャ市の取り組みは、その後、デンマーク全土に広がっています。フレザレチャ市の取り組みは、世界からも注目されているのは当然です。

日本の介護は変われるか?

デンマークの生活機能回復支援は(1)利用者の積極的な参加(2)個別的で柔軟な計画(3)身体的・精神的・社会的な包括アプローチ(4)期限のある目標設定(5)多職種連携と多分野連携(6)責任を持つコーディネーターの設置(7)計画の作成と共有(8)科学的で質の高い支援、という基本原則によって運営されています。

日本も、当然、このデンマークの事例に習おうとしています。ただ、日本の介護現場の現実(極端な人手不足)を考えると、この基本原則の重要性は広く理解されてはいても、実際には導入できないということになりそうです。手をポケットに入れたままの介護は、より潤沢なリソースが必要だからです。

デンマークに学び、日本らしいエッセンスも加えた、生活機能回復という意味でより優れた介護を実現するためには、まず、介護業界の待遇改善を通した人材の確保が必要になります。なんとか、より抜本的な待遇改善を進めてもらいたいです。

※参考文献
・石黒 暢, 『<研究ノート>「手を出しすぎないケア」のあり方 : デンマークの高齢者介護における自立支援』, IDUN -北欧研究- (23), 237-249, 2019-03-31

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