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看護小規模多機能むく(MUKU)は、佐賀県唐津市浜玉町にある介護事業者です。「自分らしく生きる」という理念を持った介護事業者で、正確には、看護小規模多機能型居宅介護と呼ばれる形態をとっています。
看護小規模多機能型居宅介護は、複合的に様々な介護サービスを提供することができる点が優位性です。基本的には、要介護者にはできるだけ自宅にいられるような支援を行いながら、施設に通ったり、必要な時は施設に泊まったり、また、スタッフが自宅を訪問したりもします。
そんな看護小規模多機能むくが、介護の現場に赤ちゃんを連れてくるという取り組みをしています。それが、西日本新聞によって記事にされています。以下、その西日本新聞の記事(2019年5月6日)より、一部引用します。
赤ちゃんとお年寄りが一緒に過ごし、ともに笑顔を育む介護事業所がある。佐賀県唐津市浜玉町の「看護小規模多機能むく」。赤ちゃんや子どもの「癒やし効果」を利用者の元気づくりやストレス軽減につなげようという全国でも珍しい試みだ。「むく」をモデルに、同様の取り組みを始める福祉施設も増えている。(中略)
むくは2017年、通所や宿泊、訪問看護などのサービスを一体化した施設として開設された。佐伯さんは「高齢者が生き生きと暮らせる場所をつくりたい」と多世代が集う介護現場を目指し、子ども連れ出勤を推奨。女性スタッフが赤ちゃんを連れて働き始めた。
地域からも「アイドル」を呼び込もうと、昨年から0~3歳の乳幼児と母親を有償ボランティアとして招く。現在は4組の母子が登録。週に1度施設を訪れ、約3時間、高齢者とともに食事したり遊んだりする。(後略)
人間の孤独に関しては、ウェイス(Weiss)の6因子を参照する必要があります。その中に「養育の機会(opportunity for nurturance)」のあるなしは、人間の孤独を考える時に重要な指標の1つして考えられています。
愛情を込めて世話をする対象があると、人間は、孤独を感じにくいそうです。孤独は、喫煙や肥満よりも健康に悪いと言われており、統計的にも、要介護や死亡のリスクを高めることがわかってきています。
看護小規模多機能むくの取り組みは、理論的には、ウェイスによる「養育の機会」という因子において、高齢者の孤独を減らすものになっているわけです。非常に優れた取り組みであり、こうした取り組みが全国に広がることが期待されます。
本気で、赤ちゃんと高齢者のケアを専門的には、幼老複合施設という分類になります。子供と高齢者を同時に預かり、交流とケアを混合的に提供する施設を特に「宅幼老所」と呼び、少しずつではありますが、こちらも国内に事例が増えてきています。
今回ご紹介した看護小規模多機能むくは、それに近い形ですが、子供を預かるという意味は少なく、より自然な形で、地域と密着したサービスの提供に成功しているように思われます。小規模多機能ならではの形でしょう。
今後は、小規模多機能型居宅介護の形態をとっている介護事業者に、看護小規模多機能むくのケースが横展開されていくと「宅幼老所」とはまた違ったサービスに発展していくイメージがあります。子供の病気が高齢者に感染してしまわないような配慮も含めて、運用ノウハウの蓄積が求められます。
※参考文献
・西日本新聞, 『介護に赤ちゃん効果 唐津の施設、お年寄りの癒やしに』, 2019年5月6日
・厚生労働省, 『宅幼老所の取組』, 平成25年1月
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