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第一生命経済研究所の調査報道(2018年8月28日)によると、認知症患者の金融資産の合計は、2017年度末時点で143兆円にもなるそうです。これが、2030年には215兆円と、200兆円を超える日も近いことが示されています。
高齢者が、振り込め詐欺のターゲットになっていることは、KAIGO LABでも何度も記事にしていますし、一般にも広く報道されています。それでも、振り込め詐欺の勢いが全く弱くならないのは、それだけ、高齢者の数も、詐欺集団の数も多いからでしょう。
「イタチごっこ」ではなく、詐欺集団の数が圧倒的に多く、それを追いかける警察の数の方が絶対的に足りていないという状況だと考えられます。詐欺集団からすれば、近い将来200兆円を超えるようなお金があるのですから、多少のリスクがあっても犯罪をやめられないのかもしれません。
警察だけでは、とても対応しきれないほどに発生しているのが高齢者を狙った詐欺だと考えると、私たちも、それぞれ独自に防衛しないとならないでしょう。具体的な対策としては、KAIGO LAB読者による投稿『アポ電などの電話詐欺・強盗を回避する方法』も参考にしてください。
そうした中、国内のニュースではないのですが、アメリカにおける高齢者を狙った詐欺事件についての報道がありました。軽度の認知症(軽度認知障害)に苦しむ人が、詐欺のターゲットになっているかもしれないと言うのです。以下、CNNの記事(2019年4月22日)より、一部引用します。
米司法省によると、米国の高齢者から盗まれたりだまし取られたりした金額は年間30億ドルに上る。判断力が優れていれば電話を切ることもできるはずだが、自分をだまそうとする相手との会話をなかなか終わらせることができない症状は、認知症の兆候の可能性があるという調査結果が、このほど米内科学会誌に発表された。
それによると、認知症の兆候が表れていない高齢者のうち、電話を使った詐欺の可能性をほとんど、あるいは全く認識していない人は、その可能性を認識している人に比べて、軽度の認知力低下か、場合によってはアルツハイマー病のリスクが高いことが分かった。(後略)
この記事は、一人暮らしの女性が詐欺にあってしまったケースが取り上げられていました。その女性は、後に軽度の認知障害があることがわかったのですが、記憶力には問題がなかったものの、判断力の低下が見られたそうです。
本来であれば、電話を介した詐欺であれば、防ぐ方法があるはずなのです。知らない番号から電話がかかってきても、電話を取り次がない機能をもっと活用するだけで、かなりの程度の詐欺は防げるはずです。
技術的には、電話の相手が詐欺的な話をしていることは、人工知能を間に噛ませれば、比較的容易に判断できると思われます。詐欺防止アドバイザーAIと、それを搭載した携帯端末や電話機の開発などが進められるべきでしょう。
銀行側では、詐欺が疑われる取引の特徴を人工知能に学習させる取り組みが進んでいるようです(産経新聞, 2019年2月23日)。とにかく、詐欺に狙われる金融資産の規模と警察の限界を考えれば、この問題は技術的な仕組みで解決するしかないと考えられます。
とはいえ、個別には、そうした抜本的な解決策の登場を待っていることはできません。当たり前に感じられる技術でも、実装には思った以上に時間がかかったりもします。そして今この瞬間にも、膨大な数の詐欺電話が、日本に限らず、世界中にかかっているのですから。
※参考文献
・CNN, 『振り込め詐欺の被害に遭う高齢者、認知症の兆候の可能性 米研究』, 2019年4月22日
・星野 卓也, 『認知症患者の金融資産 200兆円の未来』, 第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部, 2018年8月28日
・産経新聞, 『AIで振り込め詐欺発見 銀行連携でより賢く 情報通信機構が開発』, 2019年2月23日
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