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急増する中国の高齢者に、日本の介護事業者は対応できるか?

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高齢者人口が2億人を超える唯一の国

AFPの報道(2019年4月29日)によれば、中国の高齢者人口は、1999〜2018年(19年)で約1.2億人増えて、合計で約2.5億人になったとのことです。中国における高齢者の定義は60歳以上であるという点には注意が必要ですが、高齢者人口が2億人を超えているのは世界でも中国だけです。

中国の高齢化は、これで終わりではありません。2050年には、この数字は4.5億人に達すると予想されています。また、80歳以上の人口も1億人を超えると考えられています(周, 2015年)。

こうした中国における高齢化には(1)一人っ子政策による急速すぎる高齢化(2)高齢者の貧困;未富先老(3)大きすぎる地域格差(4)子供と同居できない高齢者の増加;空巣家庭、といった特徴があります。介護保険制度もない中国では、日本に先立って、高齢化問題が顕在化しているのです。

介護保険制度がない国における高齢化

介護保険制度がない国で高齢化が進むということは、有料の介護サービスは、富裕層にしか届かないということを意味します。しかも、子供と同居できない(子供は都市部で働いており子供もギリギリの生活をしている)ということは、中国の高齢者は、富裕層でないと生きられないということになります。

中国では、伝統的に、高齢者の面倒は子供がみることになってきました。しかし、一人っ子として、また、急速に発展する情報社会の中で育ってきた現代の中国の子供たちは、この伝統を(ほとんど)踏襲していません。

高齢化率という視点からは、日本の方が中国よりも厳しいというのは事実です。しかし、高齢化問題の大きさという意味では、日本もクラクラするほど大変なのですが、中国のそれは、すでに悲惨と言える状態という認識です。

日本の介護産業の輸出先として成立するのか

中国は、人口も多いため、富裕層の数も多くなります。そうした中国の富裕層向けの介護サービスは、急速にその市場規模を拡大しており、日本企業による中国での介護事業も(まだ規模はそれほどではないものの)すでに始まっています。

なお、中国における介護事業では、とにかく、豪華に見せることが大事と言われます。日本の富裕層の場合は、華美であることを嫌い、質素な中にも高品質が見えることが大事ですが、中国とは文化が異なります。中国の富裕層は、とにかく、豪華に見えることが大事なようです。

問題は、こうして外資系の介護事業者のターゲットになるのは富裕層だけだということです。豪華でないと落胆してしまう文化もまた、介護事業者の高コスト化につながり、この状況を悪化させてしまいます。

安価で高品質な介護サービスの開発が急務

日本国内でも同じことですが、中国においてはより顕著な形で、安価で高品質な介護サービスの開発が求められています。しかも、みじめな気持ちにならないように、介護サービスの見た目もとても重要になってきます。どう考えても、ITによるアプローチが必要です。

日本の介護事業者は、目の前にいる高齢者の介護をしっかりと行うことが重要であることは当然です。同時に、介護を求めている人は、日本国内のみならず、アジア全域、特に中国において深刻な状況にあることも無視できません。

別の国の心配をしている余裕はないという意見も理解できます。同時に、課題を解決することに成功すれば、それだけの収益も見込めます。高齢化市場を考えるとき、日本国内のみならず、中国についても視野に入れつつ投資を考える必要があるでしょう。

※参考文献
・AFP, 『中国の高齢者人口、19年間で1億1800万人増加』, 2019年4月29日
・周金蘭, 『中国における高齢化の現状と高齢者対策』, 現代社会文化研究 No.61, 2015年12月

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