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蓄音機を使った音楽療法?認知症への対応として

蓄音機を使った音楽療法?認知症への対応として

日本における音楽療法の取り組み

医師の田中多聞(たなか・たもん)先生は、自らも特別養護老人ホームを設立・経営する、老年医学とリハビリテーションの専門家です。介護業界では、認知症高齢者の機能回復につながる音楽療法の開発者として有名です。この田中先生のイニシアチブ以降、音楽療法は広がりをみせています。

なお、音楽療法というからには、医学的根拠に基づくことが重要になります。しかし、一部ではそうした根拠がないまま音楽療法という言葉が使われることもあり、その点については注意が必要です。特に誠実な人の場合、あえて音楽療法という言葉を使わないこともあります。

今回は、蓄音機を使った音楽療法(Music Therapy by Phonograph)について、新しい論文(増田, 2019年)の記述を元に、簡単にまとめてみます。現代の高齢者にとっては、蓄音機は、自分たちの幼年時代へのノスタルジーを喚起するもので、その様々な効果が期待されているものです。

蓄音機を使った音楽療法の特徴

蓄音機を使った音楽療法の場合、認知症高齢者には、6つのステップにチャレンジしてもらうことになります。それらは(1)椅子から立ち上がる(2)蓄音器まで歩く(3)レコードを選択する(4)蓄音機のバネを捲く(5)レコードに蓄音機の針を落とす(6)椅子に戻る、というものです。

もちろん初めは、蓄音機からの音楽に耳を傾けるという受動的な段階からスタートします。その段階から、認知症高齢者が自ら、これらのステップにチャレンジしていきます。このように発展的に進む蓄音機との関わりの過程で、介護の専門職は、高齢者の状態をアセスメントすることも可能になります。

また、この過程では、様々な対話が発生することが非常に重要です。蓄音機との関わりや、流れてくる音楽を元にして、高齢者は自らの人生を語ります。そうして高齢者の人生について理解することは、介護の専門職が、少しでも質の高い介護を届けるために、非常に重要な手がかりになります。

蓄音機の利用には科学的根拠があるか?

この論文では、蓄音機を使った音楽療法の科学的な根拠を求めて、皮膚電気活動(Electro Dermal Activity)と呼ばれる計測手法が用いられています。しかし、結果としては、この音楽療法に科学的な根拠を付与するまでの結果は(まだ)得られていません。

ただ、定性的な意味からは、蓄音機を使った音楽療法に効果があることは、観察される事実として認められそうです。とはいえ、やはり、なんとか定量的な科学的根拠が得られるところまで、研究者には頑張ってもらいたいです。

介護現場の専門職数名に話を聞いてみたところ、蓄音機ならではの音色と、バネを巻いたりする動作が記憶を呼び起こす可能性、そして対話の機会になるなら「うちでも蓄音機を使ってみたい」とのことでした。科学的根拠の確立を待たないと音楽療法という言葉は使えないかもしれませんが、現場からは、それに意味がありそうという評価が得られそうです。

※参考文献
・増田 喜治, 『認知症高齢者への蓄音器による音楽療法 : 対話と皮膚電気活動による』, 名古屋学院大学論集 言語・文化篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; LANGUAGE and CULTURE 30(2), 75-88, 2019-03-31

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