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グローバルでの介護人材の獲得競争(日本人介護職が狙われる未来)

グローバルで介護人材の獲得競争が始まっている

ドイツと争っている介護人材の獲得

世界が高齢化してきています。特に先進国においては、その傾向が顕著です。これに伴い、介護人材の確保は、どこの国にとっても大きな問題になってきています。日本でも、実質的に、外国人労働者の受け入れが認められたように、世界でも同じ動きが目立つようになってきました。

そうした中、ドイツの介護人材の確保が、ニュースになっています。なお、日本と同じように高齢化に悩むドイツは、日本よりも先に介護保険制度を構築しています。以下、ドイツで働くベトナム人の介護職のケースについて、朝日新聞の記事(2019年4月22日)より、一部引用します。

日本に先駆けて介護保険を導入したドイツも、日本と同様に介護人材不足に直面している。すでに約1割は外国人で、主に欧州連合(EU)域内の東欧出身者に頼っているが、EUの国々でも高齢化が進行。アジアの人材獲得に本格的に乗り出している。(中略)

ヘルパーを統括する立場のハーさんは、施設の中でも給与が高めだ。「看護学校の友だちは日本に行った。私はドイツに来て満足している。お金の負担もなく資格も取れ、職場の人も優しい」とハーさん。永住も可能だが「将来のことは分からない。今はドイツにいたい」。(後略)

日本の介護人材もドイツに取られてしまうのでは?

こうして世界で人材獲得競争が続くと、基本的には、給与などの待遇の良い国が選ばれるようになるでしょう。そもそも、自動翻訳機がもっと発達すれば、日本にいる介護職も、別の国に移住してしまう可能性さえあります。

日本国内においては、介護保険を運用するための財源がないという理由で、介護職の待遇は(多少の改善はあっても)低い状態に抑えられているのは厳然たる事実です。介護業界は「やりがい搾取」され続けており、その不満は極限まで高まっています。

実は、海外に暮らす日本人は増え続けています。2017年10月1日時点で、その数は1,351,970人と、100万人を大幅に超えているのです。こうして海外に暮らしている日本人も、高齢化していくわけで、そうした人々もいずれは介護を必要とします。

自動翻訳機の実用化が遅れたとしても、海外には、日本人の介護職を求めるニーズは絶対にあります。そしてそのニーズが高まっていくことは確実なのです。将来のどこかの時点で、日本人の介護職が外国から求められるのは、十分にあり得る話です。

長期的には円安が命取りになる

日本は借金大国(国債依存度の高い国)ですから、いずれは(借金の実質的な目減りを目指す必要があるので)円安に向かうことになります。円安だと、輸出が有利になり、外国人観光客ももっと増えるでしょう。それは、日本の将来のために良いことのように思われるのが一般的です。

しかし、そうした円安は、世界と比較した場合、日本の介護職の、ただでさえ問題のある待遇を、さらに安くするという効果があります。そのとき、介護人材を求める海外の企業からすれば、日本の優秀な介護職が異様に安いということになります。

そうしたタイミングで、もし、自動翻訳機が実用に耐えるレベルにまで到達していたら「短期でも、海外で介護をして稼いでくる」というグローバルな出稼ぎが成立するでしょう。そのまま、外国が肌に合えば、その国に長期滞在→永住するという人も確率の問題で出てきます。

かといって、日本の膨大な借金は、長期的な円安以外になんとかする手段が(ほぼ)残されていません。「日本の介護職のみなさま、倍の給与を出します!試しに数年だけでも、ヨーロッパで働いてみませんか?」といった広告が流れるまで、そう時間は残されていないように思います。

※参考文献
・朝日新聞, 『介護人材の不足、悩むドイツ アジアで募集、日本と競合』, 2019年4月22日

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