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中高年ひきこもり問題は、定年退職のリスクを際立たせている

中高年ひきこもり問題は、定年退職のリスクを際立たせている

内閣府による調査報道

内閣府ははじめて40~64歳のひきこもりに関する推計調査を行い、去る3月29日に、その発表をしました。発表によれば、40~64歳のひきこもりの総数は、日本全国に613,000人もいるということでした。これは、15〜39歳のひきこもり(541,000人)よりも多いということで、注目を集めています。

ひきこもりのイメージとしては、学校に馴染めなかったり、いじめを受けたり、入社した会社がブラックだったという環境要因から、自己防衛的な意味でひきこもるというものが世間の認識だったと思います。それが、今回の内閣府による推計調査によって、くつがえされたのです。

今回の注目は、ひきこもりの高齢化という文脈での報道が多いのですが、この他にも注目すべきところは、ひきこもりになる理由です。その理由は、多いものから順番に、退職(36.2%)、人間関係(21.3%)、病気(21.3%)、職場になじめなかった(19.1%)というものです。

定年退職の危険性についての再認識が必要

ひきこもりになる理由が環境要因であることは、多くの人が認識していたと思います。実体験としても、誰でも一度くらいは「少し長めに休みたい」と感じたことがあるはずです。環境によっては、誰もが、ひきこもりになる可能性があるのです。

ただ、ひきこもりになる理由が職場からの退職であるという点には、もっと注目が集まってよいはずです。なぜなら、定年退職というイベントは、それこそ、ほぼ全ての人に訪れるものだからです。定年退職をきっかけとして、ひきこもりになっている人の大規模な統計はありませんが、その数は膨大なものになると考えられます。

世間一般には、定年退職は、一つの区切りとして、お祝いを持って迎えるものです。しかし現実には、社会的な人間関係を失うことによるアイデンティティーの危機でもあります。少なからぬ人が孤独になり、そこから健康を害し、介護を必要とする状態にまで至りやすいのです。

最もインパクトのある施策とは?

ひきこもりになる原因は、退職だけではありません。しかし退職が、最も大きな原因になっています。そうした意味から考えると、最もインパクトのある施策とは、結局のところ「定年退職のない社会」ということになりそうです。

これはもちろん、現役世代の就労支援が必要ないということではありません。そうではなくて、誰もが高齢者になるという前提からすれば、最もひきこもりを量産してしまうのは定年退職というイベントなので、そこにも相当な配慮が必要になるはずだ、という指摘です。

65歳で定年退職をして「毎日が日曜日」になるのは、相当なリスクだという社会的な理解が必要です。定年退職を完全に無くすということではなくても、いきなり仕事をゼロにしてしまうのは危険です。ボランティアやアルバイトでもよいので、とにかく、社会に居場所がある状態を維持することが重要でしょう。

※参考文献
・朝日新聞, 『中高年ひきこもり61万人 初の全国調査、若年層上回る』, 2019年3月29日

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