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ウェイス(Weiss)の6因子で孤独を考える

ウェイス(Weiss)の6因子で孤独を考える

ウェイス(Weiss)の6因子

マサチューセッツ・ボストン大学の教授(社会学)であるロバート・スチュアート・ウェイス(Robert Stuart Weiss)は、孤独(社会的孤立)についての研究の先駆者として著名です。ウェイス(Weiss)とだけ記載されることも多く、それだけ馴染みのある学者です。

このウェイスによる孤独を評価するときの6つの因子(1970年代に開発されている)は、今もなお、研究者たちに参照されています。ウェイスは、人間は物理的に1人きりだから孤独を感じるのではなく、自らの周囲を取り巻く関係性の中で満たされないとき孤独を感じるとしました。

ここから、ウェイスは、孤独の評価指標として(1)相談の機会(2)信頼できる他者(3)愛着(4)社会統合(5)価値の再確認(6)養育の機会を見出しています。以下、それぞれの指標について、解釈を加えながら、もう少し記述を加えてみます。

(1)相談の機会(opportunity for guidance)

困ったことがあったとき、相談の機会があるかどうかは、とても重要です。注意したいのは、いまは困ったことがなくても、いざ、そうしたことに直面した場合、相談できる相手がいたり、相談できる場所があったりすることを認識しているかどうかが大事という部分です。高齢化する日本の場合、健康不安だけでなく、金銭的な不安も大きくなります。健康不安については、日本には、世界的にみても優れている医療機関が多くあるため、相談の機会は十分に提供されていると考えられます。しかし、金銭的な不安については、日本の生活保護制度が正しく機能しているとは言い難いため、弱点として認識する必要もありそうです。

(2)信頼できる他者(reliable alliance)

家族や親友など、信頼できる他者がいるかどうかは、とても重要です。家を借りるときも、病院に入院するときも、日本では保証人が必要になります。そうした保証人を快く引き受けてくれるような他者がいるか、いないかは、死活問題にもなりかねません。もちろん、これもまた、実際に保証人がいるかどうかという話ではなく、いざとなれば、保証人になってくれる人がいると認識しているかどうかが大事です。介護という文脈でも、自分が認知症になった場合、自分の意思を正しく代弁してくれる他者がいるかいないかは、本人の孤独感に大きく影響するでしょう。

(3)愛着(attachment)

慣れ親しんでおり、離れがたいと感じられる関係性のあるなしもまた、重要です。悪友とか腐れ縁といった表現で、あえてネガティブな表現をしても切れることのない関係性は、心理的な安全性の基礎にもなります。心理学的には、愛着の対象は人間に限らず、ペットや物、地域にも感じられる情緒的な結びつきを示しています。介護においては、住みなれた自宅で暮らしながら介護を受ける在宅介護と、専門の施設に入居して介護を受ける施設介護の2つの可能性があります。この時、施設介護は、本人にとって大切な愛着を感じる対象との離別につながることも多く、注意が必要です。

(4)社会統合(social integration)

社会統合とは、人々が分断され、少数派が差別されていないような状態、または、そうした状態に向かう過程を意味している言葉です。差別が強まっている社会では、自分もいつ、差別される立場になるか不安が高まります。新参者でも受け入れてくれるような地域社会や、気軽に参加できる趣味のグループなどがあれば、社会統合の評価は高くなります。日本においては、まず、年齢差別が強く根付いてしまっており、問題視されています。また、新参者に優しくないと言われます。日本の社会統合は、一般的に課題を抱えていると考えた方が良さそうです。

(5)価値の再確認(reassurance of worth)

自分がこの社会に役立つ存在であることを再確認できるような機会の有無は重要です。仕事で必要とされたり、地域のボランティアで活躍したり、その内容は何でも構わないのですが、とにかく、自分には誰かに「ありがとう」と言ってもらえる価値を生み出せると認識していると、孤独を感じにくいというのは、実感としても理解しやすいでしょう。仮に、孤独に近い状態になっていたとしても、自分の価値を疑わない人は、その孤独は自分の意思による選択になります。しかし自分の価値を疑っている人の場合、他者から少しでも離れてしまうと、不安になるでしょう。

(6)養育の機会(opportunity for nurturance)

愛情を込めて世話をする対象のあるなしも、重要です。特にウェイスも、この因子の重要性に言及しています。具体的には子育てを示すことが多いのですが、子育てに限らず、ペットや観葉植物の世話なども、この因子に含まれています。自分がいなければ、相手の生命が危険に晒されるような対象を持つことは、自分自身の存在意義を疑わないことにつながります。前述した価値の再確認をする機会が毎日あるという具合に読み換えることも可能でしょう。

ウェイスの6因子で読み解く現代社会

日本に限らず、先進国では、軒並み、孤独が問題視されるようになってきました。イギリスでは、孤独担当大臣というポストが登場しているほど、この問題は、広く認識されてきています。背景にあるのは、先進国が直面している少子高齢化です。

少子高齢化によって、ウェイスの6因子から考えても、孤独が進みやすい状況が生まれるのです。高齢化による引退は、現金収入を減らし、金銭的な不安を高めます。親友のように信頼できる他者は、7年ごとに半減することから、高齢化は、信頼できる他者や愛着のある他者を減らします。

現役を引退するということが、年齢によって定められていることが多いことにより、年齢差別は固定化しています。また、そうして仕事から離れてしまえば、一般には価値の再確認も難しくなるでしょう。そして少子化は、文字通り、養育の機会を減らします。

孤独は、喫煙や肥満よりも健康に悪いという調査結果があります。逆に考えると、孤独を放置しないことが、健康寿命に影響し、社会保障費の抑制につながるのです。そんな孤独と戦うとき、ウェイスの6因子が参考になるのは、間違いなさそうです。

※参考文献
・大片 久, et al., 『地域高齢者を対象としたSocial Provisions Scale(SPS)短縮化の試み : 項目反応理論分析による検討』, 岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (25), 27-34, 2019-03-12
・CHIPTS, 『The Social Provisions Scale』, 2012年1月

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