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南海トラフ地震でも高齢者の避難が課題になる

南海トラフ地震でも高齢者の避難が課題になる

高齢者は災害の被害者になりやすい

東日本大震災においては、亡くなった方の3分の2は、60歳以上の高齢者でした。また、死亡率は60歳代で平均の1.4倍、70歳代で平均の2.3倍、そして80歳代では平均の3.3倍になっています(和気, 2013年)。高齢者は、どうしても災害の被害者になりやすいという認識が求められます。

また、災害そのものは逃げ延びたとしても、避難所や仮設住宅での慣れない厳しい生活によって亡くなってしまう震災関連死においては、その9割近くが高齢者ということもわかっています(和気, 2013年)。逃げ延びれば、それで良いということにはならないのです。

日本は、高齢化社会を「高齢者でも豊かに生きられる社会」として実現していかなければなりません。その意味からすれば、高齢者の目線から、様々な災害への備えを充実させていく必要のあることは、論をまちません。

南海トラフ地震をどうするのか

気象庁によれば、南海トラフ地震は、100~150年間隔で発生してきた巨大な地震です。前回の発生から70年が経過しており、発生が警戒されています。この南海トラフ地震が発生した場合、関東から九州にかけての広域な太平洋側で、10mを超える津波が想定されています。

この南海トラフ地震の影響による津波の被害を少しでも小さなものにするための対策に、各自治体は苦慮しています。高齢者に対して「高台に避難してください」と言っても、特に日常的に介護が必要な人の場合、かなり難しいということにもなります。以下、朝日新聞の記事(2019年4月7日)より、一部引用します。

南海トラフ地震で津波被害が想定される139市町村に朝日新聞がアンケートしたところ、7割が津波対策の課題に「高齢者や障害者などの避難支援」を挙げた。(中略)南海トラフでの巨大地震発生確率は今後30年以内に70~80%。想定死者数は最大で32万人、うち23万人は津波の影響とされる。(中略)

大きすぎる想定被害にどう対応するのか

想定死者数が最大で32万人というのは、先の東日本大震災の15倍以上の被害です。ここで、いかなる災害であっても、人命が失われることは悲しいことであり、人数の大きさを話題にしすぎることには問題があります。1人の命でも、それが失われてしまうことは、あってはならないことです。

同時に、被害を少しでも減らすためには、より多くの人々が「自分ごと」として警戒することが重要です。人間には抜きがたく正常性バイアスが備わっており、そうしたバイアスを超えて警戒を高めるには、規模について考えることも必要です。

高齢者にとって、住みなれた地域を離れることは、心身にダメージ(リロケーションダメージ)を伴うものです。しかし、南海トラフ地震を想定し、少しでも多くの高齢者に、より安全な場所に移住してもらうような対策と、それへの助成金の付与などは、できる限り進めるべきだと考えられます。

※参考文献
・和気純子, 『震災と高齢者 ─地域包括ケアと福祉コミュニティ形成─』, 学術の動向, 2013年11月
・朝日新聞, 『南海トラフ地震の想定自治体、7割「高齢者の避難課題」』, 2019年4月7日
・気象庁, 『南海トラフ地震について』(ウェブサイト)

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