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高齢者の虐待、また過去最高に(虐待防止の3フェーズ)

高齢者の虐待、また過去最高に(虐待防止の3フェーズ)

増える高齢者の虐待(の把握)

厚労省は、2017年度における高齢者の虐待件数が、17,588件と、過去最高となったことを発表しています。内訳は、家族(または同居人)によるものが17,078件(全体の97%)で、介護職による虐待が510件(全体の3%)ということでした。

こうして毎年、虐待件数が増えている背景は(1)本当に虐待そのものが増えているから(2)高齢者の数自体が増えているから(3)虐待の理解が進み虐待として認識されるケースが増えているから、という3つの理由が混ざり合っています。

かつては虐待とは認識されていなかったことも、虐待に関する社会的な理解が進めば、虐待として正しく認識されることになります。この影響は小さくないと考えられますが、本当のところはわかりません。

虐待のほとんどは家族によるものという認識

虐待でニュースになるのは、多くが、介護職による虐待です。しかし介護職による虐待は全体の3%にすぎないのです。さらに、介護職による虐待は、介護がチームで行われる以上、発覚しやすいという特徴があります。

これに対して、家族による虐待は、全体の97%とほとんどを占めるだけでなく、密室で行われることが多く、発覚しにくいという特徴があるのです。そうして発覚しにくい虐待が、17,000件以上も見つかっているということは、この裏には、本当はもっと多くの虐待があることを意味するでしょう。

家族による介護が行われている現場では、虐待は、特殊な事例ではなく、残念ですが「よくあること」という認識が必要になります。その上で、当たり前に起こってしまっている虐待を、どのように防止するのかという方法論が重要になります。

高齢者の虐待防止における3つのフェーズ

高齢者の虐待防止には、3つのフェーズでの対応が提案されています。第一次予防(未然防止)は、広く、虐待の概念を社会全体に周知することで、虐待を未然に防ぐという基本的な教育になります。この基本的な教育には、虐待の総数を減らす効果があります。

第二次予防(悪化防止)は、虐待をしてしまうリスクの高い人を特定し、虐待があれば早期に介入しつつ、虐待の深刻化を避ける具体的な対応になります。とにかく、虐待を初期に発見し、虐待が長期化しないようにすることが目標になります。

そして第三次予防(再発防止)は、一度は虐待が起こってしまった現場で、虐待が再び起こらないようにする対応です。一般には、関係機関と連携し、虐待をしてしまった人を孤立させないための努力がなされます。再発率を測定していくことで、地域レベルでの活動の効果がわかるのも特徴です。

虐待かな?と思ったら

まず、高齢者虐待防止法によれば、虐待に気づいた人には、市町村への通報の義務があります。当然ですが、虐待を受けている本人も、通報することができます。このとき、通報の秘密は守られることになっているので、その点について不安に感じる必要はありません(守秘義務が働きます)。

通報先としては、市町村の高齢者福祉を担当している窓口か、または、地域包括支援センターになります。こうした通報は一般には第二次予防(悪化防止)に相当し、通報が遅れてしまうと、虐待がエスカレートし、恐ろしい事件に発展してしまう可能性があるため、とにかく、通報をためらわないことが重要です。

介護に疲れている人は、誰もが、虐待に手を染めてしまう可能性があります。他者の虐待でなくても、自分自身が虐待してしまいそうな時もまた、市町村の窓口や地域包括支援センターを頼るようにしてください。虐待は、誰でも起こしてしまう可能性のあるリスクなのです。

※参考文献
・朝日新聞, 『高齢者虐待、最多の1万7588件 介護施設で510件』, 2019年3月26日
・乙幡 美佐江, 『高齢者虐待防止法に基づいたソーシャルワーク実践における虐待事象の悪化防止 ─高齢者虐待の予防支援システムの構築に向けて─』, ルーテル学院研究紀要 = Bulletin of the Japan Lutheran College and Theological Seminary (52), 59-79, 2019-03-01

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