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ひきこもりの子供と要介護の高齢者が暮らす・・・マルチケアの時代に

ひきこもりの子供と要介護の高齢者が暮らす・・・マルチケアの時代に

ひきこもりに関するデータ

ひきこもりは、かなり以前から問題視されてきたものの、何か抜本的な対策が打たれないままに、時間だけが過ぎている日本の社会問題です。個別には、NPOなどが活動をしているものの、信頼できる大規模な実態調査などは(ほとんど)存在しない状態が続いています。

そうした中で、NPO法人全国引きこもりKHJ親の会(家族連合会)による調査は貴重です。この団体による2013年の調査報告では(1)親と同居するひきこもりの人が83.3%(2)親の平均年齢は63.2歳(3)ひきこもりの人の76.0%が男性(4)ひきこもりの人の平均年齢は33.1歳(5)87.2%に兄弟姉妹がいる、といったことがわかっています。

こうした、ひきこもりになっている人々には、発達障害など、何らかの障害や病気に苦しんでいる人も少なくありません。そして、この調査方向は2013年のものであり、それから6年が経過していることを考えると、ひきこもりの人はもちろんなのですが、親の高齢化が気になります。

ひきこもりの人の親が要介護に

ひきこもりの人と、その親が高齢化していることは、容易に想像できます。そうしてついに、親が要介護になってしまうケースが目立ってきているようなのです。以下、NHK NEWS WEBの記事(2019年3月21日)より、一部引用します。

ひきこもりの長期化や高齢化が問題になる中、介護などの支援を受けている高齢者の家庭で、同居している子どもがひきこもり状態になっている事例が数多く確認されていることが、ひきこもりの家族の会が行った調査でわかりました。(中略)

有効な回答のあった260余りのセンターのうち6割近くが、相談を受けた高齢者の家庭に、ふだんは家にいてほとんど外出しない状態が半年以上続くひきこもりの子どもがいるケースがあったと回答したということです。(後略)

要介護者だけを相手にできない時代に

これまで、KAIGO LABでも、子供と親の両方をケアしなければならないダブルケア、子供が、自分の子育てをしながら親と祖父母を介護するトリプルケアなどを話題にしてきました。

これらに加えて、ひきこもりの人もそこにいるケースが増えている可能性があるわけです。そうなると、もはや、ケアが必要な対象がいくつあるかという数を数えることよりも、マルチケアへの対応として、行政と民間が一緒になって、具体的なアプローチを考えるべき時代ということになります。

ダブルケアの文脈でも指摘してきた通り、とにかく、こうしたマルチケアには、対応する側に窓口の一元化と他職種連携が求められます。しかし、如何せん、行政の側が縦割りになっていることが多く、現場は窓口の一元化すら程遠い状態になっています。

様々な問題が先送りされてきて、今があります。そうして先送りされてきた問題は、坂道を転げ落ちる雪玉のごとく、私たちに迫ってきています。抜本的な対策が必要ということはわかっていても、それを期待することもできません。

それでもなお、匙を投げずに、現場を守っている人々がいます。少しでも多くのメディアが、そうした現場の声を集め、政治に働きかけていけなければ、日本の社会福祉は完全に崩壊してしまいます。せめて、声をあげることは、続けて行かないとなりません。

※参考文献
・NPO法人全国引きこもりKHJ親の会(家族連合会), et al., 『「引きこもり」の実態に関する調査報告書』, 2013年3月
・NHK NEWS WEB, 『ひきこもり高齢化 介護支援の高齢者家庭に同居のケースが多数』, 2019年3月21日

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